この記事をまとめると
■モデルチェンジ時の注目のひとつはエクステリアデザイン
■当然先代よりもいいものを目指しているがときに先代のよかったと言われるクルマも
■デザインに造詣の深い筆者が5台を挙げて解説
プロ中のプロが手がけているハズなのに先代に敵わないことも
ヒットしたクルマのモデルチェンジは難しいと言われますが、とりわけエクステリアデザインは特段ヒット作でなくても常に難しいもの。なかには「これなら先代のほうがよかった」と思えるケースも少なくありません。今回は、内外の現行モデルのなかからそんなクルマを5台選んでみました。
【トヨタ・アクア】派手さは増したが「芯」が抜けてしまったボディ
まず1台目は、トヨタのアクアです。「トヨタの新しいハイブリッドです」のコピーのもと、2011年に登場した先代(初代)は、立ち位置を確立していたプリウスのコンパクト版として登場しました。
「トライアングルシルエット」を基本に、シャープなフロントランプや安定感のある台形グリル、明快なキャラクターラインと「筒」をイメージした豊かなリアフェンダー。縦型ランプでキリッと引き締まったリヤビューなど、2~3代目プリウスのエッセンスを巧く取り込んでいました。
「Harmo-tech(知性・感性を刺激する、人に寄り添う先進)」をデザインコンセプトにした現行型は、しかし少々煩雑なラインや面、デカ口のグリル、過剰なスポーティ感など、一世代前のトヨタデザインによって肝心の「芯」が抜けた緩いボディとなってしましました。いまひとつパッとしない販売状況は、決して「役目が終わった」ワケではないと思えるのですが。
【ダイハツ・コペン】タイムレスなデザインが秀逸だった先代
2台目は、ダイハツのコペンです。2002年に登場した先代(初代)は、「ティアドロップシェイプシルエット」と称するお椀型の佇まいが特徴的。また、フードから続くV字ラインによるグリルと丸形2灯のランプの組み合わせは、そのままリヤにも使われることで、じつにシンプルなまとまりを見せていました。
これに対し、2014年に登場した現行モデルは「Dress-Formation」のコンセプトのもと、ローグ、セロ、エクスプレイの3車型が用意され、一部で交換可能な外板が大きな特徴とされました。この企画自体に無理があったのかもしれませんが、強いキャラクターラインが走るベースデザインに魅力が乏しかったようにも思えます。
「コペンクラブ」など、ファン同士の交流を図る企画は最近のダイハツらしい手法ですが、それにより商品自体の魅力があと回しになってしまったのかもしれません。先代の「孤高」ぶりが一層それを物語っているのです。
【スズキ・アルト】気軽で安心なデザインは存在感が薄い?
3台目はスズキのアルトです。2014年に発売された8代目である先代は、「原点回帰」をテーマに初代のシンプルさを狙った意欲作でした。厚いボディに薄く躍動感のあるキャビンを載せたボディは、あたかも往年のフィアットのような欧州車的佇まいで、メガネをモチーフにしたフロントや、2トーン塗装が可能なリヤハッチなど、小さなボディに個性が詰め込まれていました。
一方、2021年に登場した現行型は「気軽」「安心」「愛着」をコンセプトとし、「自動車っぽい」先代の反動的なスタイリングが行われました。角の取れた「まるシカク」をバンパーやドア下部に施したボディは柔らかな面を持ち、フロントランプこそ先代のイメージを引き継ぎつつ、イメージを一新したのです。
欧州スタジオ作の現行型は、大きなキャビンを含めてバランスがよく、全体のまとまり感もあります。その意味でコンセプトは達成されているのですが、個性を徹底して排除したことによる存在感の薄さは、どうやら売れ行きにも影響しているようです。