この記事をまとめると
■マツダの4代目ロードスターが受注を停止し、在庫限りの販売となる
■軽快なフットワークが魅力的なクルマで「人馬一体」というコンセプトを持っていた
■1.5リッターエンジンの搭載は当初酷評されていたが結果的にファンに受け入れられた
マツダ・ロードスターの現行モデルが注文受付を終了
6月29日をもって、マツダ・ロードスターの現行モデルが注文受付を終了しました。ただしこの先、商品改良をして再び登場するようで、ND型はまだ継続するとのこと。
さて、これまでロードスターには、「RFには2リッターがあるのに、なぜソフトトップモデルには1.5リッターしかないのか?」という論争がついてまわり、いつかソフトトップの2リッターモデルも販売されるのではないか、と期待していた人も多かったのではないでしょうか。
とはいえ、初代からずっと受け継がれている「人馬一体」に込められた想いや、歴代の開発主査たちが担ってきた重責、そしてND開発時にどうして1.5リッターになったのかという流れを紐解いていくと、ソフトトップモデルが1.5リッターに徹底されていたのは必然だったのだと、理解できると思います。
そもそも「人馬一体」とは、残念ながら2023年4月に逝去されました、初代NAロードスターの開発主査を務めた平井俊彦さんが、日本古来の伝統武術である流鏑馬(やぶさめ)からヒントを得て、日本を代表するライトウエイトスポーツをつくるための開発テーマとして用いた言葉です。それが時を経て、現在ではマツダブランド全体を象徴するフィロソフィーとして用いられています。
これは以前、平井さんが開発主査の頃にシャシー設計担当としてNA型開発に関わり、その後、平井さんの跡を継いでNA型の開発主査に任命され、NB型、NC型の開発主査を歴任した貴島孝雄さんから伺ったことですが、NA型が全世界で43万台以上もの大ヒットとなったことで、NB型開発にあたってはじつにさまざまな要望が世界中から寄せられたといいます。その多くは「快適性」を望むもので、とくにゴルフバッグが入るようなトランクスペースや、高速安定性に関するものが多かったそうです。
しかし、すべてを聞き入れることはできないので、変える必要のあるものはなにかを徹底的に見直しながら、「初代の基本コンセプトは変えない」という方針はブレないようにと、いわば「守るために変えていく」ことを選んだといいます。
ところが次のNC型の開発では、先に発売されていたRX-8と共通のアーキテクチャーで作ることが必須条件とされていました。車両重量が1.3トンにもなる、4シーターのスポーツカーと共通の部品で、どうやってライトウエイトスポーツをつくれというのか……と、当初はかなり頭を悩ませたといいます。
なんとかロードスター専用部品をつくらせてもらうことはできたものの、側面衝突規制への対応でサイドエアバッグが必須となり、全幅は1.7mオーバーに。重量アップを補うためと、北米からの「モアパワー」というリクエストが強く、2リッターエンジン搭載も必須となってしまいます。厳しい条件のなか、血の滲むような苦労を積み重ねて完成したNC型ロードスターは、時代に即した正常進化だと好意的に迎えられる一方で、やはり初代のような独特のヒラリヒラリ感が薄れたことは誰の目にも明らかでした。