名作Z8のご先祖様はBMWをピンチに追い込んだ問題作! 超美しいクルマなのにたった252台しか作られなかった「507」 (2/2ページ)

BMWの高級でスポーティなイメージでも高すぎて通用しなかった

 そもそもこの507の企画は、アメリカの自動車輸入業者であるマックス・ホフマンによって提案されたものだった。その狙いは高価なメルセデス・ベンツ300SLと、イギリスから輸入される安価なオープンスポーツ群とのギャップを埋めることで、BMWはそのフレームに503の短縮版を使用するなど、既存のコンポーネントを使用することで、可能なかぎり価格の上昇を避ける工夫を施した。

 ちなみにホイールベースは503が2835mmであったのに対して、507は2480mm。車重は1330kgと当時発表されていた。

 搭載されたエンジンは、アルミニウム合金製のブロックを採用したV型8気筒OHVで排気量は3.2リッター。これも502用がベースとされたもので、ゼニス製のキャブレターやハイリフトカム、ポリッシュ仕上げの燃焼室、そして7.8まで高められた圧縮比など、そのチューニングは結果的には非常にコストのかさむものとなってしまった。

 ミッションは4速MT。最高出力は150馬力を発揮した。ファイナルレシオは3.70がスタンダードだったが、オプションで3.42と3.90の選択ができた。

 参考までに3.70のファイナルでの0-100km/h加速は11.1秒、最高速は196.3km/hというのが、当時発表されたパフォーマンス・データだ。

 オープン時の美しさが際立つ507。BMWはそれによって高級でスポーティーなイメージを回復するつもりだったが、その計画は完全に挫折。後に誕生する、より小型で安価な1500や700の成功によって財政は回復したのだ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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