この記事をまとめると
■6月24〜25日に北海道・オートスポーツランドスナガワで全日本ジムカーナ選手権第4・5戦が開催された
■BC2クラスにトヨタGR86で参戦する厚海選手は「VALINO」タイヤを装着
■「TOYO」タイヤを履いてRX-7で参戦した藤井選手は第4・5戦ともに3位入賞を果たした
全日本ジムカーナ選手権で見慣れぬタイヤを発見
全日本ジムカーナ選手権の第4戦および第5戦「北海道オールジャパンジムカーナ」が6月24〜25日、北海道砂川市のオートスポーツランドスナガワを舞台に開催された。土曜日、日曜日にそれぞれ決勝が行われるシリーズ初の2連戦として注目を集めており、各クラスで第1ヒートから激しいタイム争いが展開されていた。
そのなかで、筆者が気になった存在が、BC2クラスにトヨタGR86で参戦していた厚海貴裕選手だった。
BC2クラスは後輪駆動の改造車を対象としたクラスで、車検が通る範囲で大幅な改造が行えるB車両とナンバー無しのSC車両がエントリー可能。排気量の制限がないことから車種ラインアップが多彩で、トヨタGR86やスバルBRZのほか、ホンダNSXやS2000、マツダRX-7、ロータス・エキシージなどさまざまなリヤ駆動モデルが参戦していることも同クラスの特徴と言えるだろう。
しかも、装着タイヤに関しても、公道を走れるセミレーシングタイヤ、いわゆる”Sタイヤ”の装着が可能となっていることから、各ドライバーはブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップのSタイヤを武器に豪快なコーナリングを披露。そのなかで、前述の厚海選手が装着していたタイヤが「VALINO(ヴァリノ)」というブランドだった。
不勉強な筆者は知らなかったのだが、ヴァリノ・タイヤは日本発のプライベートブランドで、日本で企画されて中国で生産。アメリカを中心に年間10万本の販売実績を持つという。
モータースポーツでも活躍しており、主にドリフト競技で多くのユーザーが躍進。さらにスピード競技での可能性を探るべく、第3戦の名阪スポーツラウンドよりテスト参戦を開始したという。
しかも、厚海選手が装着していたヴァリノ・タイヤはSタイヤではなく、ジャンル的にはタテ溝の入ったハイグリップラジアルで、マシンであるGR86の改造範囲もタイヤ&ホイール、ブレーキパッド、ダンパー&スプリング、LSDを除けば、ほぼノーマルの状態。つまり、厚海選手がステアリングを握るGR86は、イメージ的には改造範囲が制限されたPN3クラスに近い。
「ターゲットとしてはハイグリップラジアルを使用したPN3クラスですが、タイヤの規格が違ってJAFに登録できないことからBC2クラスでテスト参戦を行うことになりました。現在はタイムアタック用のタイヤを持ち込んでいますが、大手のタイヤメーカーと違って我々は小まわりが利くのでジムカーナ用の専用タイヤを開発していきたい」と語るのはヴァリノ・タイヤの関 邦由さん。
一方、キャリア10年を持つドライバーの厚海選手は「変化が少なくて安定しているので、コントロールがしやすいです。それにライフも長くて、スリップサインが出てからでもグリップしてくれる。今回も新品タイヤを使わずに、第3戦の名阪スポーツランドで使用したタイヤを砂川での第4戦、第5戦でも使用したいと思います」とヴァリノ・タイヤをインプレッションする。
残念ながら24日の第4戦、25日の第5戦ともに厚海選手×ヴァリノは、BC2クラスはもちろん、PN3クラスでも最下位のタイムに終わったが、ドリフトで豊富な実績を持つプライベートブランドがスピード競技でどのような活躍を見せるのか、今後の動向に注目したい。
ちなみにドリフト競技での活躍を経て、本格的にジムカーナ競技への参戦を開始したタイヤブランドが、おなじみの「TOYO(トーヨー)」で、2021年よりトーヨータイヤとのジョイントプログラムでRX-7のステアリングを握ってきた藤井雅裕選手は「ドリフトで使われてきただけあって、すぐに発熱してくれるし、コントロール性も高い。それにライフも長いと思います」とインプレッションする。
事実、藤井選手×トーヨーは2022年の九州ラウンドで初優勝を獲得したほか、2連戦として開催された2023年の北海道ラウンドにおいても第4戦および第5戦ともに3位で表彰台を獲得。
このように全日本のジムカーナ選手権のBC2クラスにはブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップの“御三家”のほか、トーヨー、ヴァリノなど5ブランドが集結しているだけに、世界一の激戦区としてタイヤ競争にも注目したい。