この記事をまとめると
■車検証には「所有者」の欄と「使用者」の欄が設けられている
■クルマは資産の一種なので所有権が誰にあるのかをはっきりさせるために所有者欄がある
■クルマの所有者が亡くなるとクルマは資産であるため遺産分割協議書を作成する必要がある
所有者欄があることからもクルマが資産の一種であることがわかる
車検証は公道を走るクルマに必ず付属するもので、人間に例えると住民票と言っていいだろう。そのクルマについての細かな情報が載っていて、それに沿って車検が行なわれたり、取り締まりの基準にしたりする。これらはスペック的なところなのだが、車検証が住民票的な存在という点で注目なのが、所有者と使用者の記載だ。
ふたつ別々に欄があるだけに、当然、別々のこともあるし、同じこともある。なぜ違いが出てくるのかというと、クルマは資産の一種なので、所有の権利をはっきりとさせる必要があるから。現金一括で購入したり、知人からもらったりした場合は、所有する権利においてなにも問題はないので、ふたつの欄は同じになる。これが一番シンプルだ。
ただし、一番多いのは両者が違う場合で、ローンを完済するまでは担保となるため、所有者はローン会社などになって、使用者は購入者が記載される。そのほか、離れたところに住んでいる親のクルマを乗る際も所有者と使用者の欄が異なることもありうる。
資産ゆえにローンを返済するまでは自分のものにならないということなのだが、逆を言えば完済すれば、ローン会社から完済証明や委任状を出してもらって、それを元にして車検証の記載事項を変更すればいい。ただ、実際のところはここが問題で、表面上はなにも変わらないので、ローンを返済してもそのままという人はけっこう多かったりする。手放すときに気がついて、慌ててローン会社やディーラーに連絡することになってしまい、売却や廃車手続きが滞ってしまうこともある。ちなみにローン会社からは完済したお知らせはこないので、ユーザー側で手続きするしかない。
問題は所有者が亡くなってしまった場合。何度も言うように、クルマは資産なので相続の対象になるため、なにかしらの手続きをしないといけない。これが大変で、遺言書に明記がない場合は、相続人で話しあって相続する人を決定したうえで、戸籍謄本などの書類に加えて、遺産分割協議書を作成する必要もある。
自動車の場合は遺産分割協議書の書式が決まっていて、国土交通省のサイトからダウンロードできるのでこちらも用意して、相続対象者の捺印と人数分のコピーが必要。また、細かいところでは同居していない場合は車庫証明も必要で、けっこうな数の書類を運輸支局に提出して、名義を変更してもらうことになる。
遺産となったクルマにローンが残っていれば、相続人が支払いを続ける必要があるし、逆に負債として相続放棄をするという手もある。もちろん相続放棄をすると、クルマだけでなく、すべての遺産について放棄することになるので注意が必要だ。
所有者が亡くなってしまった場合は別として、ローンを完済したら速やかに完済証明を出してもらい、名義変更を確実にするようにしたい。支払いが済んだのに、自分のものではない状態というのは、いいことはないと言っていい。