わずか100ccで税金額が年額5500円高くなることもある
現代のレベルで排気量100ccのエンジンは、どの程度の最高出力が期待できるのだろうか。たとえば、ホンダが入門レーサーとして用意している「NSF100」に搭載する空冷単気筒エンジン(排気量99.2cc)の最高出力は8.4馬力となっている。
もうひとつバイクを例に挙げると、スズキのネイキッドモデル「ジクサー」には150と250をラインアップしている。150は空冷、250は油冷になるなどエンジン設計自体が同一ではないので単純に排気量の違いを比較できるわけではないが、ジクサー150のエンジンは排気量154ccで最高出力13馬力、ジクサー250のエンジンは排気量249ccで最高出力26馬力となっている。
このあたりのスペックを見比べてみると、排気量100ccというのは8~10馬力を生み出すことが期待できるだけのポテンシャルを持っているといえそうだ。
もっとも、100ccアップの恩恵を感じられるのは小排気量エンジンに限られるだろう。前述したように、軽自動車の規格変更により排気量が550ccから660ccへアップされたときは、明らかにエンジン性能の向上を実感できた。一方で、5900ccのエンジンを6000ccにしたからといって、性能アップを体感するのは難しいかもしれない。
排気量が何cc増えたというよりも何パーセント増えたか、そちらの視点を持つべきだろう。
ところで、プラス100ccの余裕はいいことばかりではない。たとえば999ccのエンジンと1099ccのエンジンは、ともに小排気量と分類されるだろうが、排気量500cc刻みで自動車税の税率を決めている日本の制度からすると後者の税負担は大きくなる。
具体的には、999ccエンジンであれば自動車税は2万5000円だが、1000ccを超えると3万500円となり(1500cc以下まで)、毎年の税額は5500円も増えてしまう。
同じことは1.5リッターを境にしても起きてしまう。1500cc超2000cc以下の自動車税は3万6000円なので、もし同一モデルで1.5リッターエンジンと1.6リッターエンジンを積んだグレードがあるような場合、後者の税負担はやはり5500円ほど増えてしまうのだ。
現在のマツダ・ロードスターの積むエンジンは1.5リッターとなっているので税負担的には1000cc超1500cc以下になるが、初代は1.6リッターエンジンを積んでいた(デビュー時)。
筆者は、その頃に「税負担の軽くなる1.5リッターエンジンのほうが(けっしてパワーを求めていない)ロードスターには似合うのでは?」という疑問をぶつけたこともあるが、開発エンジニアからの回答をまとめると、ロードスターに必要なパフォーマンスを実現するにはプラス100ccは必要であり、オープン2シーターという贅沢なクルマなので自動車税が多少増えることをお客様は許容するであろう、というものだったと記憶している。
このように「プラス100ccの余裕」というのは、まさに庶民の贅沢となる場合もある。たかが100cc、されど100ccなのだ。