世界初の自動車と最新技術を融合すると……こうなるの!? メルセデス・ベンツF-CELL Roadsterの衝撃的な姿 (2/2ページ)

制作後は350kmもの道のりを実際に走破!

 たとえば、大昔の細いリム&ハードゴムタイヤも現代の素材に置き換えながらも雰囲気をしっかり再現。また、シート背後にエンジンを搭載するレイアウトも踏襲したようです。カール・ベンツご自慢の954cc単気筒エンジンとF-CELLシングルユニットの大きさが似通っているというのも若手製作者たちにとってなにかヒントになったのかと。また、骨董品は前輪の操舵にスティックとレバーを用いていますが、F-CELL Roadsterではジョイスティックで前2輪を操舵。ステアリングを装備しないというポイントは、たしかにベテラン設計者には思いもよらない思想かと。

 あたかもF1に馬車のリムをつけたかのようなフォルムですが、350kmの距離をしっかり自走できるようです。完成後のイベントは、1888年にカール・ベンツが奥様を乗せてパテント・モーターヴァーゲンを走らせたルートを再びF-CELL Roadsterで走破するというもの。

 ちなみに、カールが走った当時はガソリンスタンドという存在はなかったため、目的地のヴィースロッホにある薬局にヘルプを求めたそう。じつはこの薬局がいまでも続いていて、F-CELL Roadsterもジンデルフィンゲンからこの薬局を目指したという洒落たお披露目になったそうです。

 それにしても、さすがメルセデス・ベンツといいますか、若手社員や訓練生といえども優秀な人材が揃っているようです。なお、メルセデス・ベンツのジンデルフィンゲン工場は操業100年以上という同社にとってもっとも重要な拠点。顧客自らがクルマのオーダーのできるカスタマーセンターをはじめ、出来上がったメルセデス・ベンツをテストドライブさせてくれるテストコースも併設するなど、同社を表徴するような工場なのです。従業員数は3万5000人を数える大規模なもので、Sクラスやマイバッハといった同社のハイエンドモデルを中心に生産。また、設計開発部門も備わるなど、単純な工場とは呼びづらいほどの陣容を誇っています。

 F-CELL Roadsterの次は、いっそのこと骨董品オマージュなコンセプトカーでなく、現役F1マシンの燃料電池仕様でも作らせてみてはどうでしょう。これだけ優秀な若手なら、レースシーンに向けても画期的なアイディアを出してくれそうです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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