残価設定ローンを利用すると上級グレードのほうがお買得!?
新車のなかで、昭和のころを彷彿するようなグレード体系となっているトヨタ・アクアを例にしてみた。アクアはGRスポーツを例外とすると、最上級グレードのZ、中間グレードのG、廉価グレードのXそして最廉価グレードのBがラインアップされている。買い得グレードをGにするかXにするかで意見がわかれそうなところだが、Xはヘッドレスト一体型フロントシートになっており、その装備内容から見てもフリート販売(レンタカーやカーシェアリングなど)向けグレード色が強いので、今回はGを買い得グレードとする。
両グレードともにFFとし、Zで標準装備となり、Gではオプション扱いとなるアルミホイールと、Bi-Beam LEDヘッドランプをオプション選択したGをメーカーウェブサイト上の見積りシミュレーションで試算すると、まずGでは支払い総額は266万7803円となり、これをベースに割賦元金を242万9100円として36回払いで残価設定ローン(均一払い)の試算を行うと、初回が5万4703円、月々の支払いが5万3900円、そして支払い最終回(残価分据置額)は78万500円となった。同じようにZの試算を行うと支払い総額は285万8651円となり、割賦元金を259万9800円として36回払いの残価設定ローンを試算すると、初回が5万8951円、月々が5万5600円となり、支払い最終回(残価分据置額)は90万9300円となった。
Gの試算と比較すると、Zは初回で4248円、月々の支払いで1700円支払いが多くなることになる。アクアに限らず、商談時に試算すると中間グレードと上級グレードでの支払い差がわずかとなるケースが多く、「それなら」ということで上級グレードを選択する人が多くなっているのである。「それでも、どうしても予算に収まらないというお客様には中間グレードをおすすめするようにしております」とは現場のセールスマン。
このように残価設定ローンを組むと上級グレードが魅力的にも見えてしまうのは、残価相当額を据え置く、支払い最終回分の算出方法にあるようだ。残価率自体はグレードによって差がつくことはない。算出に際してオプション分は車両価格に含まれないのだ。つまり、上級グレードは少々いらない装備が多いので、中間グレードで必要な装備だけをオプションで選んだとしても、オプション分は残価相当額算出には含まれないので、残価据置分の支払い最終回分の金額に差がついてしまう。今回のアクアでの試算でも、Zの残価額相当据置額が90万9300円なのに対し、Gは78万500円となっている。車両本体価格ではZはG比で17万円アップとなっているが、残価相当据置額では19万848円Zのほうが高くなっている。今回はオプション計上額が約16万円となるが、さらにオプション装着額が多額になれば、上級グレードのほうが買い得感はより高まるともいえよう。
ただし、ここまではあくまで残価設定ローンを利用した場合の話。現金一括払いで、しかも、10年以上など減価償却後も乗り続けるような人ならば欲しいモデルで欲しいグレードやオプションを選べばいい話で、よけいなおせっかいとなるだろう。
ただし納期遅延の目立つ昨今では、発売される新型車のなかには、上級グレードを優先的に生産するケースも目立つ。それは、オプションの多い中間グレードよりはスムースな生産が行え、納期遅延をできるだけ拡大させないようにできるとの配慮もあるようだ。
少なくとも、売り手側では上級グレードについて残価設定ローンを使って買ってもらうのが、いまの新車販売のスタンダードと捉えているのは、傾向として間違いないといえよう。