ホンダもワークス体制でスーパー耐久に参戦
この「ST-Qクラス」は、STO(スーパー耐久機構)が認めた開発車両であれば、どのような車両でもスーパー耐久へ参戦することができるというのが大まかな仕組み。
現在、ここには先述のトヨタやマツダのほかに、スバルや日産も参戦している。使用するのは「CNF(カーボンニュートラルフューエル)燃料」となっており、各社が環境に配慮した燃料で参戦しているのが特徴だ(トヨタのみ今回から液体水素)。
なお、「S耐ワイガヤクラブ」というのも発足しており、これはS耐機構(STO)の理念に共感した仲間が自動車メーカーの垣根を超えて、「レースで得た知見を市販車へフィードバック」「若手エンジニアの育成」「カーボンニュートラル燃料や水素エンジンの実証実験」などに挑戦するグループのことだ。
「カーボンニュートラル」というひとつのテーマのもとにさまざまな自動車メーカーが集結しているとも言える。
そして今回、この第2戦よりついにホンダも参戦することを発表した。ホンダのレース部門を統括するHRCが指揮するワークス体制であり、チーム名は「Team HRC」。2輪の名門ワークスがついに4輪でも始動した形だ。ドライバーは小出峻/武藤英紀/伊沢拓也/大津弘樹という、スーパーGTなどで活躍する日本を代表するレーサーたち。
ちなみに伊沢選手はシビックタイプRで鈴鹿のタイムアタックや研究開発にも関わっていたシビックを知り尽くしたレーサーでもある。
使用する燃料は他メーカーと同じCFN燃料で、ベースは市販車と同じままだという。セッティングなどが異なるので、その辺りはまだ手探りなところもあるが、いろいろ試しながらノウハウを蓄積していくとのこと。
HRCとしては、今回の参戦を通じて「ホンダのブランド力を高める」「4輪と2輪にこのノウハウを生かす」「カーボンニュートラルのさらなる研究開発」「モータースポーツへの裾野を広げる」ことをテーマとしている。また、この参戦を通してモータースポーツの楽しさをもっと知ってもらいたいという狙いもあるそうだ。
と、ここまで聞いても「結局アピールをするだけして、メーカー内だけの話で終わるの?」となるかもしれないがご安心を。
HRCとしては、このシビックをレース現場で鍛えつつ、我々の一般ユーザーへ向けたフィードバックも行っていくとこの会見で発表している。
具体例としては、一般車両へ向けたパーツの展開などを考えているほか、最終的には1台のクルマとして世に解き放つ可能性まで示唆した。もちろん、現段階でこれがレース専用車なのか特別仕様車的な感じになるのかまではわからないが、こういったワクワクを提供してくれる可能性があるというのが、ファンとしては非常に嬉しい発表だ。
なお、そのほかにHRCが参戦することによってスーパー耐久の現場にもっとホンダ車を増やしたいという野望もあるそうだ。ホンダはマーチャンダイジングが苦手ということもあるそうで、グッズにしても用品にしても売るものが少なく、ファンからはさまざまな要望が多いそう。みんなで楽しめるよう、今回の参戦をキッカケにいろいろな方面からアプローチしていくプランもあるとのこと。
マシンに関しては、「高回転域はガソリンの方が優れておりトルクが薄い」「タイヤが急遽変更になったのでセッティングはまだ手探りな面もある」とのことだったが、マシンに対する信頼性は高い様子。実際、今回のレースでは5位という結果で無事に完走。初参戦ながら高い信頼性を見せた。
ちなみに、ホンダではHRDCという社内の有志を募ってST-2クラスに参戦しているチームもあり、こちらもシビックタイプRを使って戦っている。燃料は通常のガソリンだ。こちらにはスーパーGTのARTAで戦う野尻智紀氏やCARトップやWEB CARTOPでもお馴染みの桂 伸一氏、シビックタイプRの開発責任者でもある柿沼秀樹氏も参戦している。結果はST-2クラスを3位でフィニッシュとなった。
ホンダは2024年のスーパーGTでも「シビックタイプR GT」を走らせることを発表しており、もうすぐテスト走行も行うという段階。このクルマの発表時には「シビックタイプRのブランド力を高めていきたい」という話もしていたが、今回のスーパー耐久への参戦でよりその色が濃くなったとも言えよう。
ホンダの創業者である本田宗一郎氏の「レースは走る実験室」という言葉はあまりにも有名だが、そのスピリットがいまでも着実に受け継がれているのではないだろうか。先日F1へのカムバックを宣言したこともあり、1ファンとして、クルマ好きとして、ますますホンダの活動から目が離せない。そんな発表であった。
今後どのようにマシンが進化していくのか引き続き見守りたいと思う。