2リッターターボでオーバー300馬力! 狙うは量産FF車世界最速の座
0-100km/h5.7秒! 最高速270km/h!!
本流のシビックは3ナンバーワイドのセダンとなっても、国内で支持を集めることはできなかった。フィットベースのセダン、グレイスの投入予定もあり、8代目を正常進化させた9代目は基本的に海外専用モデルとなった。
そこで欧州シビックベースのタイプRが、台数限定でイギリスから三度導入されることに。そしてタイプRは、この代からまた新しい時代に突入した。ターボモデルだ。
K20C型2リッターVTECターボは、4リッターV8に匹敵する310馬力/40.8kgmを発揮。2000rpm台から炸裂するターボは、全域で一触即発の加速性能を発揮。0-100km/h5.7秒のダッシュ力を誇り、最高速は270km/hに達した。
異次元の速さをFFで成立させるため、デュアルアクシス・ストラットサスなど足まわりもR専用設計。超高速域のサーキットパフォーマンスと一般道の快適性の両立を狙い、アクティブダンパーシステムが初採用されたのもトピックだ。
ターボになったタイプRには、当然のようにFF世界最速の座が宿命づけられた。舞台はスポーツモデルの聖地、ニュルブルクリンク北コース。そして、メガーヌR.S.トロフィーR(軽量化のため2シーター化した、いわばニュル・スペシャル)のタイムを打ち破り、見事FF最速の実力を世界に証明した。
シビックはめでたく10代目を迎えると、再び日本へ。北米から2年近く遅い突然の復帰だった代わりに、タイプRはハッチバック、セダンとともに当初からラインアップされた。しかも、生産は変わらずイギリスでありながら限定ではない通常販売で、ファンを喜ばせた。
メカニズムは正常進化で、パワーは320馬力に上乗せ。リヤサスはマルチリンク採用でさらにポテンシャルを高めた。ニュルではFF最速タイムを再び更新、王座を奪還した。
マイナーチェンジでは台数限定の『リミテッドエディション』が登場。ハイグリップなミシュラン パイロットスポーツ カップ2やシャーシの強化チューンなどにより、サーキットの戦闘力を一段と高めた。
■9代目 タイプR
2015年10月登場
当時の新車価格:428万円
ターボ武装で300psオーバー。心昂ぶるブッチギリの走り
この代からK20C型2リッター直噴「VTECターボ」を搭載。可変バルブ機構はVTCを吸排気の両側に、VTECは排気側に採用された。モノスクロールターボと電動ウエストゲートの組み合わせは、310馬力の大パワーと優れた過給レスポンスを両立。フロントのデュアルアクシス・ストラットサスはタイヤの接地性を最大限に引き出し、トルクステア低減にも威力を発揮した。電子制御ダンパーはサーキットベストと公道最適の減衰力を選択可能。欧州シビックベースで最後の「R」だ。
■10代目 タイプR
2017年7月登場
当時の新車価格:450万360円
プラットフォーム一新、究極のFFスポーツを標榜
基本プラットフォームをグローバルで統一。欧州シビックの特徴だったセンタータンクの廃止で、動力性能に理想的なセンターストレート排気が可能になった。タイプRを前提とした設計で、土台となる剛性もさらに向上。K20C型は320馬力にアップし、6速MTにはヒール&トゥ不要のレブマッチシステムが採用された。電子制御ダンパーを核とするドライビングモードは3モードに進化。サスはリヤがトーションビームからマルチリンクに一新され、圧倒的なスタビリティを発揮。
絶対に譲れない最強FFスポーツの称号
10代目のタイプRがマークしたニュルのFF世界最速タイムを再び破ったのは、現行型にフルモデルチェンジされたメガーヌR.S.トロフィーRだ。
さらには、先代に続いて鈴鹿サーキットにも殴り込み。2分25秒454のタイムを叩き出し、ホンダのお膝元でもFF最速の称号を奪い返した。
先代タイプRはリミテッド~を擁しニュルで借りを返すはずだったが、新型コロナで実現せず。だが、鈴鹿では約1秒半も速い2分23秒993を叩き出し、王座を奪い返した。
そして、近ごろ登場した11代目「爽快シビック」の新型タイプR。ニュルでタイムアタックを行い、FFモデルで最速となる、7分44秒881(※1)のラップタイムを記録。FF世界最速の座をメガーヌから奪い返した。
※ 本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
※1 Nürburgring公式測定値。2019年より制定されたNürburgring公式ルールに基づく、北コース(Nordschleife) 20.832kmでの測定値。2019年以前は、20.600kmでの測定かつNürburgring非公式タイム