日本史上最強のFFはやっぱりシビック! 初代から11代目の「栄光」と「苦難」の歴史を一気見せ (2/3ページ)

自然吸気式VTECで極めたスポーツコンパクトの最高峰

ターボにも勝ったVTEC 世界一贅沢なサスも導入

 1987年はF1でウィリアムズ・ホンダが2年連続でコンストラクターズチャンプに輝き、ロータス・ホンダでは中島悟がセナとコンビを組んで日本人初のフルタイムドライバーとなった。鈴鹿でF1が初開催されたのもこの年だ。

 そして4代目「グランドシビック」が、2代目CR-Xとともに登場。スポーツモデルにはSiが引き続きラインアップされた。ZC型エンジンを搭載したが、まず走り屋を驚かせたのはシャシーだった。

 ホンダが85年、アコード/ビガーにFFで世界初採用し、レジェンドクーペやプレリュードに展開していた4輪ダブルウイッシュボーンサスが、シビックにも投入されたのだ。

 これもF1譲りの技術であることは言うまでもなく、シビック/CR-Xは量産コンパクトで世界一贅沢なサスを持つことに。Siは卓越したロードホールディングによって操縦性をさらに高めるとともに、先代と比較にならない上質な乗り心地まで手に入れた。

 1.6リッターDOHCのZCも高出力化。グロスより約15%低い値になる新しいネット表示でも130馬力/14.7kg-mと、NAのクラス最強を誇った。

 一方、ライバル勢は、スーパーチャージャーのトヨタ4A-GZE(MR2やFFレビン/トレノ)、マツダのB6ターボ(ファミリア/レーザー)、三菱4G61ターボ(ミラージュ)といった過給機付きが、140~150馬力を実現していた。

 しかし、シビックには驚くべきエンジンが用意されていた。平成元年のマイナーチェンジでインテグラに続き搭載された、SiRのB16A型DOHC・VTECだ。画期的な可変バルブタイミング・リフト機構によって、量産NAの常識を破るリッターあたり100馬力を達成。8000rpmまで許容する超高回転型で160馬力を絞り出し、世界のド肝を抜いた。

 過給機付きのライバル勢が追い上げを図ると、5代目「スポーツシビック」では170馬力までパワーアップ。バブル景気真っ只中で熾烈を極めたホットハッチバトルでも、ホンダの技術力を存分に見せつけた。

■4代目 グランドシビック SiR/ SiR II

1989年9月登場

当時の新車価格:145万9000円/153万9000円

1.6リッタークラス最強、VTECユニット初搭載

 先代より落ち着いたデザインだが、メカはスゴかった。シンプルだったサスは、贅沢な前後ダブルウイッシュボーンに大転換。1.6リッターに追加投入のDOHC・VTECは、低中回転と高回転でバルブのタイミングとリフト量を切り換える世界初の機構だ。NAで驚異の100馬力/Lと実用域の扱いやすさを両立。SiR IIはパワステやパワーウインドウを備え、新開発ビスカスLSDとABSをセットオプション設定。

■5代目 スポーツシビック SiR/ SiR II

1991年9月登場

当時の新車価格:153万円/162万円

さらに高出力化、サスペンションも熟成

 イケイケドンドンのバブル期に開発された「サンバボディ」は、リオのカーニバルの陽気さと躍動感を表現。空力性能も向上した。1.6リッターDOHC・VTECは160馬力/7600rpmから170馬力/7800rpm(MT)へとさらに高回転・高出力化。運動性能と乗り心地をともにレベルアップさせるべく、前後ダブルウィッシュボーンサスは大きく見直し。タイヤは195/60R14から同55R15に低偏平化された。

究極のホットハッチ “サーキットの狼”タイプR

 バブル景気の終焉とともにスポーツカーブームは去り、時代はいわゆるRVブームに。過激だったコンパクトスポーツたちも、一台また一台とパワー競争から姿を消した。

 6代目の「ミラクルシビック」は、社会の要請に応えるべくリーンバーンの低燃費と130馬力のパワーを両立する新開発3ステージVTECを目玉に据えた。それでもトップには170馬力のSiR IIが君臨。スポーツモデルとして依然クラス最高峰の実力を備えていた。

 しかし、それで満足するホンダではなかった。レーシングスピリットで量産車のポテンシャルを極限まで引き上げたタイプRが、NSXとインテグラに続いてシビックにも投入されたのだ。

 SiRの1.6リッターDOHC・VTECをベースに開発されたB16B 98スペックRは、驚異の185馬力/8200rpmを達成。その速さをサーキットで余すことなく発揮できるよう、ボディや足まわりもスパルタンに強化された。

 赤いレカロのバケットシート、チタン削り出しのシフトノブといった『R』専用アイテムも装備。かつて「テンロク」がコンパクトスポーツの象徴だった時代の、最初で最後のリトルモンスターである。

 7代目「スマートシビック」になると、コンセプトを環境対応と使い勝手重視に大転換。国内向けハッチバックはワゴン風の5ドアのみになった。タイプRは3ドアを生産するイギリス工場から導入。エンジンはこの代から2リッターDOHC・i-VTECにスケールアップされ、走りの次元を大幅に高めた。

 通称がなくなった8代目では、フィットの大ヒットで国内からついにハッチバックが消滅。歴代唯一となるセダンベースのタイプRは、こうして誕生した。ボディは北米重視でほぼミッドサイズに大型化。サスは公道で覚悟が必要なほど超ハードで、まさにサーキット専用の、NA時代のシビック「R」では一番スパルタンだった。

 そんな声に配慮してか、2年後にはイギリス生産の3ドアもタイプRユーロとして導入。日本は台数限定で販売された。

■6代目 ミラクルシビック タイプR

1997年8月登場

当時の新車価格:199万8000円

走りの性能をトコトン追求 待望のタイプR、ついに登場

 シビック初のタイプR。1.6リッターDOHC・VTECは高回転対応バルブシステム、吸排気抵抗の低減、圧縮比アップなどの専用設計で185馬力を発揮。リッターあたり出力は116馬力に達した。シャシーも、ポテンザRE010のハイグリップに負けないハードチューンドサス、パフォーマンスロッドなどで強化されたボディで武装。テンロクターボに勝るとも劣らない速さと比類のない官能性、ヘリカルLSDと相まってのダイレクト感あふれるハンドリングを堪能させた。

■7代目 スマートシビック タイプR 

2001年10月登場

当時の新車価格:220万円

タイプR史上初のイギリス生産 弾丸ホットハッチは余裕の2リッター

 初の2リッタータイプR。イギリス生産もこのモデルが最初だ。ボディは国内5ドアよりコンパクトで、先代タイプRに対しても全長/ホイールベースが50mm短縮された。タイプR最後の5ナンバーモデルだ。

 K20A型エンジンは吸気側にVTC(連続可変バルブタイミング)を加えたDOHC・i-VTEC。一新されたストラット/ダブルウイッシュボーンサスは、アームやハブベアリングまで強化された。土台となるボディはねじり剛性が先代に対し80%向上。

■8代目 タイプR

2007年3月登場

当時の新車価格:283万5000円

サーキットも軽々こなすエキサイティング4ドアセダン

 タイプRで唯一の4ドアセダンモデル。ハードウェアはあくまでもサーキットベストを目標に開発された。

 K20Aはさらなる高圧縮比化や吸排気抵抗低減などで、歴代NA最強の225馬力/8000rpmを実現。クロスレシオの6速MTを介し、トップエンドのパワーと切れ味はカミソリのごとし。

 ボディは剛性が格段に向上。サスはサーキットでもロールを抑え込む超ハードセッティングだ。フロントブレーキにはブレンボのアルミ製対向4ポットキャリパーを採用。

初の英国製タイプR その名も『タイプRユーロ』

 8代目シビックでは、まったく違うふたつのタイプRが国内に用意された。そのひとつがタイプRユーロだ。

 欧州シビックの3ドアハッチバックをベースにイギリス工場で生産、日本に導入という生い立ちは先代と同じ。だが、先に発売されたセダンのタイプRとはキャラクターも大きく異なった。

 それを象徴したのが、ストラット/トーションビームのサスに採用されたザックス製ダンパー。シャシーやボディは基本的にタイプRの文法どおり強化されていたが、欧州のワインディングをハイアベレージで駆け抜けるのに最適なしなやかさを備えていた。

 2リッターDOHC・i-VTECもスペックは201馬力/19.7kgmと控えめで低回転からハイレスポンスでトルクフルな加速性を重視。6速MTも同じ狙いでギヤリングされた。

 サーキットもやぶさかでないが、レーシングテイストで極めたワインディングベストのタイプR、それがユーロだった。


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