日本史上最強のFFはやっぱりシビック! 初代から11代目の「栄光」と「苦難」の歴史を一気見せ (1/3ページ)

この記事をまとめると

■1972年にデビューしたホンダ・シビック

■初代からスポーツモデルが用意されていた

■今回は歴代シビックのスポーツモデルを振り返る

RSからCX、Si、SiR、タイプRまで半世紀の進化と深化を振り返る

 元来、量産ファミリーカーである一方、歴代に渡ってつねにスポーツモデルをラインアップに据えてきたシビック。ひとつの例外もなく、ホンダのアツいレーシングスピリットが余すことなく注ぎ込まれた生粋のFFスポーツ。シビック誕生から半世紀がたった節目のいま、改めてその足跡を追った。

初代シビック“RS”にはDOHC計画もあった!?

 初代シビックは、4輪業界に進出したものの小型車で不振続きだったホンダが、背水の陣で開発した大衆車だ。パワー偏重のマニアックなクルマづくりへの反省から、目指したのは『フツーのクルマ』。とはいえ、三つ子の魂なんとやらで、スポーティグレードは1972年のデビューから設定された。

 GLがそれで、パワーアップしたEB型1.2リッターエンジン(グロス60馬力/9.5kgm→69馬力/10.2kgm)、フロントディスクブレーキを搭載。大型バンパーやタコメーターなど装備も差別化されていた。さらに安価なスタンダードやデラックスも設定されたが、人気の中心となったのはGLだった。

 そして、スポーツ性をより高めたのが、シビックスポーツモデルの始祖として知られるRSだ。エンジンはツインキャブで76馬力にパワーアップされ、MTを5速化。動力性能に合わせて足まわりも専用に強化された。精悍なセミバケットシートもスポーツ派をときめかせたアイテムだ。

 RSのネーミングは「ロードセイリング」の頭文字。帆船が大海原をどこまでも走るように、「滑らかに道路を帆走する」という意味が込められた。

 しかし、これが本当は『レーシングスポーツ』だったというのは、オールドファンには有名な逸話だ。

 初代LPL(ラージプロジェクトリーダー)を務めた木澤博司氏の述懐によれば、それもツインキャブ程度ではなく、DOHCや強化ブロック採用など、本格的なスポーツモデルが画策されていたという。

 待ったをかけたのは運輸省(現・国土交通省)。当時すでに2輪の暴走族が社会問題になりつつあり、レーシーなスポーツモデルは認可が下りなかったのだ。2輪で世界を制したホンダの『前歴』も影響したかどうかは、定かではない。

 70年代後半に入ると排ガス規制の本格的な強化で、スポーツモデルは冬の時代に。その余波が残るなか登場した2代目「スーパーシビック」は、1.5リッターの新CVCCエンジンに5馬力アップのCXを設定。ワンメイクレースの先駆けとしても名を残している。

■初代 1200RS

1974年10月登場

当時の新車価格:2ドア 76万5000/3ドア 78万3000円

5速MTで駆る76馬力。4独サスで俊敏に曲がる痛快FFスポーツ

 RSは「ロードセイリング」の頭文字。1.2リッターエンジンはCV型ツインキャブ装着で76馬力にパワーアップされた。4速にオーバートップを加えた5速MTは、燃費向上にも貢献。足まわりもワイドラジアルタイヤ(当時は155/SR13でワイド!)、4.5インチリム、専用チューンのサスで強化された。

 外観はラバー製オーバーライダー、サンセットオレンジのイメージ色が特徴。内装は黒のセミバケットシート、フットレストが精悍さを演出した。

 排ガス規制適合の1.5リッターCVCCになると、スポーティな雰囲気はRSLに受け継がれた。

■2代目 スーパーシビック 1500CX

1979年7月登場

当時の新車価格:95万7000円

1.5リッターにスケールアップ 磨き込まれた空力ボディ

 初のフルモデルチェンジで登場した2代目は、台形ボディをはじめ初代のコンセプトを色濃く継承。明確なスポーツモデルは現れなかったが、CXがそれに近い存在だった。副燃焼室を中央寄りに一新した新CVCCの1.5リッターエンジンは、標準仕様(80馬力/12.3kgm)から若干パワーアップ。足まわりはハードサス、リヤスタビ追加(フロントは全車)で引き締められた。外観は専用ハニカムグリル、オーバーライダー、サイドプロテクターなどが識別点。

F1技術を反映したホンダ独自のDOHC

 80年代に入ると各メーカーの排ガス規制対策も落ち着き、自動車業界は元気のいい走りを取り戻しはじめた。低公害エンジンの開発を理由にF1を撤退した(これがCVCC誕生につながる)ホンダがスピリットとのタッグで15年ぶりに復帰したのは、83年のことだ。

 3代目「ワンダーシビック」が登場したのも、同じ83年だ。

 3ドアハッチバックの25iは、1シリンダー3バルブのEW型CVCCエンジンを搭載。PGM-FI(電子制御燃料噴射)と相まって、1.5リッターNA最強のグロス100馬力/13.2kgmを発揮した。クラス最高峰の低燃費も両立。

 ホンダの独創性はシャシーにも及んだ。新開発の「スポルテックサスペンション」は優れたスペース効率でホンダのM・M(メカミニマム・マンマキシマム)思想を具現化するとともに、エンジンの速さを存分に引き出しながら峠道をミズスマシのように走るフットワークを実現した。

 ホンダF1は83年の最終戦からウィリアムズにエンジンを供給。翌84年7月のダラスGPでは、K・ロズベルグのドライブで復帰後初の優勝を飾った。第1期の67年以来、17年ぶりの栄冠だった。

 そして、秋にはまるでタイミングを計ったように、もうひとつの吉報がもたらされた。シビックとCR-Xに新しいスポーツグレード、Siが投入されたのだ。

 エンジンルームに収まったのはZC型1.6リッターDOHC。S800の生産終了以来、14年ぶりとなるホンダDOHCの復活である。1気筒4バルブの駆動には、F1からフィードバックしたスイングアーム式を採用。RA163E型F1エンジンを彷彿とさせるヘッドカバーも、スポーティユーザーを歓喜させた。

 実力もその血統に違わず、135馬力/15.5kgmを発揮。前年のAE86型レビン/トレノでひと足早く1.6リッターDOHCの先鞭をつけたトヨタ4A-G型(130馬力/15.2kgm)をパワー/トルクともに凌駕。コンパクトスポーツモデルのトップに躍り出た。

■3代目 ワンダーシビック Si

1984年10月登場

当時の新車価格:137万6000円

ホンダ独自のエンジン技術を投入した4バルブDOHC

 車名以外すべてが変わった3代目。メカもユニークだった。フロントサスはコイルバネを用いないトーションバーストラット。復活のホンダDOHC、ZC型エンジンは、市販乗用車世界初の4バルブ内側支点スイングアーム式を採用した。直打式よりバルブリフトを大きく取るためだ。世界初の異形中空カムシャフト、4連アルミシリンダーブロックで小型・軽量化も追求された。エンジンとのクリアランスを稼ぐボンネットのバルジがZCの証。


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