不運なクラッシュにより6時間でリタイヤ
フロントが細い極端なフォルムからは「曲がらないのでは?」という印象を持つかもしれないが、前後重量配分はおおよそ3:7となっており、比喩ではなく物理的に「リヤで曲がる」マシンとなっているといわれている。
日産デルタウィングがル・マン参戦において目指したのは『通常のスポーツカーが使用する半分の燃料・タイヤで完走する』こと。そのために、エンジンは量産車であるジュークに搭載されていた1.6リッター4気筒ターボを改良したものを搭載していた。
遅くて燃費がいいのであれば当たり前という話になるが、日産の発表によるとV8エンジンを積んでいたLMP2レーシングカーと同等のタイムを刻んだというから驚きだ。ちなみに、2012年当時のLMP2における最人気エンジンはニッサンVK45DEだった。
日産デルタウィングのチャレンジはスタートから6時間で終わってしまったため、完走という目標は達成できなかった。しかしながら、マシントラブルでリタイヤしたわけではなかった。トヨタのル・マンカーであるTS030 HYBRIDにヒットされ、コースアウトしてしまったのがリタイヤの原因だ。
そのときの日産デルタウィングのドライバーは本山 哲選手、トヨタTS030 HYBRIDのドライバーは中嶋一貴選手という日本人ドライバー同士のアクシデントということで日本のファンから悲鳴があがったのは言うまでもない。
それでも6時間、1000kmを超える走行において燃費やタイヤ消費といった点で環境負荷の低さを証明した日産デルタウィング。残念ながら、そのプロジェクトは2012年で終了したが、ル・マンという長丁場を革新的テクノロジーの実験室として活用しようという姿勢は多くの自動車メーカーが抱き続けているのだ。