インテリアもラグジュアリー!
とはいえオースティンもまたブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)に吸収されてしまうのですが、よほどバンデン・プラのネームバリューが高かったのか、ここでも高級車部門で生き残ることに。で、その後の10年ほどは細々とボディを作って生きながらえていたのですが、1962年に転機が訪れました。BMCのメガヒット「ミニ(ADO15)」に続く、ADO16が発売されると、1964年ついにバンデン・プラのコンプリートモデルが「プリンス1100」の名で発売されたのです。
ADO16はそもそもミニの兄貴分ですから、全長3.7mという超コンパクトサイズ。しかも一般大衆のアシとして作られているので、高級感とかラグジュアリーとは無縁といっても過言ではありません。そこにバンデン・プラが高級要素をこれでもかとぶち込み、プリンセスの名に恥じないクルマに仕上がったのです
具体的には質素なフロントマスクにクロームの効いたグリルを追加し、オプションパーツだったアディショナルランプを標準装備。しかも、オプションパーツよりも大型化するという豪気っぷり。
また、バンデン・プラ・プリンセスといえば、そのラグジュアリーなインテリアが有名ですが、ダッシュボードはもちろんウォールナット張りで、ドアの内張上端部はウッドキッピングという手法で木製パネルを貼りこみ、鉄板むき出しだったADO16と鮮明な差別化を施しています。
さらに、シートやドアの内張は正真正銘のコノリーレザーをフルに張りこみました。座面だけコノリーみたいなナンチャッテと違って、なにからなにまでコノリーというのはロールスロイス以外では滅多にみられません。なお、プリンセスはシート自体の作りも違っており、簡素といって差し支えないADO16とは異なり、分厚くてクッションの効いたシートが採用されています。
また、シートといえば、前席背面にピクニックテーブル(新幹線などでよく見る収納式のテーブル)が装備されていることも、ショファードリブン(運転手によるドライブ、つまりオーナーは後席に座るべき)というコンセプトを体現しているわけです。
いまとなっては旧弊で、職人頼みな作りといえますが、効率やコストといった要素が見当たらないところは現代の高級車とは代えがたい魅力でしょう。芸能界きってのクルマ好きだった樹木希林さんや、常盤貴子さん、紗栄子さん(元ダルビッシュ有の奥様)といったステキな女性に愛されるのもバンプラのキャラゆえかと(ちなみに、浅田美代子さんが樹木希林さんから譲ってもらったバンプラというのは、日産マーチをカスタムしたものでしたw)
ミニ同様、パーツの供給やメンテナンスしてくれる工場にも不自由するという話は聞きませんので、ロールスロイスが無理でもバンデン・プラ・プリンセスで「真の高級車」を味わうというのもグッドチョイスに違いありません。