この記事をまとめると ■「バンデン・プラ・プリンセス」について解説
■「ベビー・ロールス」とも呼ばれた元祖「小さな高級車」
■1964年にコンプリートモデル「プリンス1100」が発売された
始まりは 馬車の架装メーカー 小さな高級車というフレーズ、耳に聞こえのいいインパクトから数多くのクルマに使われてきましたが、「本革シート採用」とか「贅沢なウォールナットを使用」くらいで高級をうたわれても、真の高級を知るユーザーからは鼻で笑われがち。高級の定義にもよりますが、マスプロダクトなクルマではどうしても限界がありそうです。そこへいくとバンデン・プラ・プリンセスは、大量生産車でありながら「ベビー・ロールス」の呼び名さえ戴いた元祖「小さな高級車」。その出自を知れば知るほど、バンデン・プラ・プリンセスがいまでも「高級」を知る人々から人気なことがわかります。
だいたいバンデン・プラ・プリンセスという車名からして格式が高そうな雰囲気ですが、もともとはベルギーで創業した馬車の架装メーカー「ファン・デン・プラス」社がことの始まり。いわゆるコーチビルダーというやつで、当時は王侯貴族や大金持ちを相手にしたビジネス。金に糸目をつけない注文主に対し、安っぽい素材やみすぼらしい仕上がりなどもってのほか。腕のいい職人、確かな素材、そして顧客の意図を汲むビジネスセンス、いずれが欠けても成り立つものではないでしょう。
こうしたスキルやセンスをもって、1913年ファン・デン・プラス社はとうとうイギリスにクルマのボディを製作するコーチビルドショップを設立。当時の高級車はエンジン&シャシーとボディワークはそれぞれ専門業者が請け負うのがスタンダード。当然、コーチビルダーも群雄割拠していたわけで、ファン・デン・プラス社もイギリスのお金持ちを相手に、大陸で培ったセンスと技を見せつけようじゃないかと、意気揚々と乗り込んだわけです。で、このころからファン・デン・プラス(Van den plus)というベルギー風味(オランダ語圏の苗字?)の社名がバンデン・プラ(Vanden Plus)と英語っぽい表記と呼び方になった模様です。
バンデン・プラ・プリンセスのブランドエンブレム 画像はこちら
バンデン・プラを一流コーチビルダーと言わしめたボディワークは数多くありますが、代表的なものはやっぱりロールスロイス。とりわけ1914年のシルバーゴースト「アルパインイーグル」は完全なオープンルーフやパーティングラインが見当たらないスチール製ボディなど伝説的なヒット作となりました。コーチビルドはどうやらオープンボディに自信があったようで、ベントレー4 1/2オープンツアラーや、オランダの高級車「ミネルバ」にも特徴的なトランクをリヤに積んだオープンボディを提供しています。
バンデン・プラが手がけたベントレー4 1/2オープンツアラーのエクステリア 画像はこちら
そして、コーチビルダー受難の時代、すなわちシャシーとボディを一貫生産するマスプロダクトの時代を迎えると、バンデン・プラもご多聞にもれずオースティンに吸収されるという憂き目に。もっとも、任されたのは同社の大型セダンA99の高級仕様ボディということで、ブランドに敬意を払われたのかバンデン・プラ3リッターとかバンデン・プラ4リッターという車名が付けられたのは大いなる救いだったかもしれません。
バンデン・プラ 3リッターのエクステリア 画像はこちら