ブレーキを放すだけで発進できる「D」がスマート?
現代のトルクコンバーター式ATは伝達効率が大きく改善され、また多段化、全段ロックアップ機構、精緻な電子制御方式などが加わることで、MT車と遜色のない動きが可能となっている。むしろ、変速作用が自動で行われることで、走行シーンによってはMT車を凌ぐ性能を発揮する場合もあるほどだ。
さて、話をAT車の信号待ちに戻すが、Dレンジでブレーキを踏んで止まる状態か、力の伝達を断ったNレンジの状態で止まるべきか、それともミッションをロックするPレンジにセレクトして止まるべきなのか、判断に迷うところである。まあ、Pレンジは駐車モードと考えてよいので、DかNかという選択となる。どちらが正解なのだろうか?
答えは、どちらも正解と言ってよいだろう。Nレンジは、エンジン動力が伝わらないポジションのため、機械的な負担はまったくないが、発進の際、セレクターをDレンジに動かさなければならず、ほんの一瞬だが、動力が伝わるまで待たなければならない。一方のDレンジは、動力がつながったままフットブレーキで車両を止めているため、ブレーキペダルをリリースしアクセルを踏み込んだ瞬間に加速が始まる。
どちらの停車状態が安定しているのか、という話だが、DレンジにせよNレンジにせよ、フットブレーキを踏んでいなければならないことは同じで、こうした意味では、ブレーキペダルのリリースと同時に動きだせるDレンジのほうが現実的かもしれない。
そもそもATとは、アクセル操作だけで走れることが大きな特長、利点となるミッションであることを考えれば、信号待ちもNレンジではなく、Dレンジのままブレーキを踏んでいることが、よりユーティリティに優れた車両の扱い方になるのではないか、と考えている。要は、車両の停車状態を保つのはフットブレーキであり、この操作に集中することがポイントだと理解している。