リーズナブルな価格もマッスルカーの条件だった
マッスルカーの条件としてもうひとつ大切だったのは、その価格がリーズナブルであることだった。それを1960年代に入ってとくに強く意識したのはクライスラーで、GMやフォードが掲げたプライスよりも手頃な価格は、マッスルカーには必要不可欠な条件ともなった。
ポンティアックGTO、396シボレー・シェベル、ビュイック・グランスポーツ、オールズモービル442といったGM勢に、フォードはマーキュリー・コメットサイクロン、マーキュリー・サイクロンといったモデルをラインアップし、マッスルカー市場において高い評価を得る。
しかし、クライスラーはそれに対してプリマス・ロードランナーやダッジ・スーパービーなどのモデルをリーズナブルなプライスで販売。それらに象徴されるマッスルカーは、1960年代から1970年代にかけて、マーケットへの大きな影響力と、メーカーへの収益をもたらしたのだ。
1970年代を迎えると、シボレー・カマロやフォード・マスタング、プリマス・バラクーダといった、いわゆるポニーカーの人気が高まり、それらはいずれも比較的コンパクトで軽量な2ドアボディを持ち、かつ手頃なプライスを設定。そして何よりドラッグレースにも参戦できるストリートでの運動性能を発揮できることから、これらもまたマッスルカーとみなすべきではないのかという議論も持ち上がる。
だが不運にもマッスルカーの人気は、1970年代の大気浄化法や燃料危機、保険料の増加などにより年々低下。その存在が再び表舞台へと帰ってくるのは、1980年代を待たなければならなかった。
ちなみに現在、日本に正規輸入されているマッスルカーにはどんなチョイスがあるのか。そのサイズや価格を考えれば、シボレーのカマロが唯一の存在ということになるだろう。
設定されているエンジンは、2リッターの直列4気筒ターボと、6.2リッターのV型8気筒の2タイプ。マッスル・カーを名乗るのならば選択は後者の一択で決まりだろう。そのダイナミックな走りは、強い刺激に満ち溢れている。