じつは「デザイン代」がない超大変な作業! 新型アルファード&ヴェルファイアの「イケてる」デザインの秘密 (2/2ページ)

伝統を受け継いでいるサイドポンツーン形状

 その秘密はどこにあるのか。デザイナー氏にヒヤリングしてみたところ、「ある種の錯覚を利用しています」とヒントをくれた。

 たとえばリヤバンパーからスライドドアに向かっている彫りの深いキャラクターラインに注目してほしい。バンパーやフェンダー部分ではエッジの効いたキャラクターラインになっているが、スライドドア部分にフォーカスすると、キャラクターラインはボディ内部に溶け込むような処理がされている。

 わかりづらいと感じるのであればスライドドアを開けてみると一目瞭然だ。後方との流れを切って、ドアパネル単独でみると物理的にはそれほど彫りが深いわけではない。

 しかし、リヤバンパーからの流れで見ると、この部分も十分に彫りが深いラインになっているように感じるはずだ。まさに「錯覚」を利用したデザインとなっている。デザイン代が非常に少ないなかで、従来モデルよりも抑揚をつけた面を表現するための工夫である。

 冒頭で記したように、新型アルファード/ヴェルファイアでは、フロントグリルの表現アプローチとしてメッキのギラギラで押し出すという従来の手法を変更している。とくにヴェルファイアのフロントグリルはブラックとしているため、従来ユーザーが持つイメージを継承するのに苦労したという。それでも、ひと目でアルファード/ヴェルファイアと識別できるのは、フロントバンパーの両脇に置かれたサイドポンツーンの形状にある。

 とくに大胆に台形状のサイドポンツーンを配したヴェルファイアは、間違いなく伝統を受け継いでいると実感できるのではないだろうか。有機的な形状とされたアルファードのサイドポンツーンも同様に、伝統を受け継ぐ形状といえる。

 前述のとおり、新型アルファード/ヴェルファイアは全長5000mm以内に収めることを至上命題としているわけだから、フロントまわりにおいてもデザインが使える空間に余裕があるはずもない。そうした制約のなか、十分にアルファード/ヴェルファイアとしての個性を作り分けたデザイナーの手腕は見事だといえるのではないだろうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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