【試乗】超激戦区のMクラスミニバンにセレナは先進性で勝負! 乗り心地に課題はあれど「プロパイロット2.0」の自動運転っぷりは圧巻 (2/2ページ)

プロパイロット2.0はセレナとの相性抜群

 走り始めると、やはり静かでスムースなことが特徴的で、また電動モーターの豊かなトルク特性が優れたドライバビリティを生み出していることがわかる。ミニバン形式の車体は車両重量が1850kgほどもあり、急な上り坂などではクリープ制御やエンジンの回転数を高めてのトルコン制御など、ガソリンエンジン車の場合は負担が大きくなるのだが、モーター駆動はまるで坂の上から引っ張られているかのごとくストレスも感じずにスルスルと急勾配を上っていける。

 さらに速度を上げてワインディング路などを力強く駆け上がることもでき、ロールやピッチングを抑えたサスペンションのチューニングと相まって、軽快な運動性能がボディサイズやミニバンということを忘れさせるようなハンドリングを示してくれた。

 高速道路に乗り入れると、今回から新採用されるプロパイロット2.0が威力を発揮する。プロパイロット2.0は、ドライバーがステアリングから手を離しての使用が可能であり、常に左右の交通状況をモニタリングして適切な車線位置とラインをキープしてくれる。

 また、前走車に追い付いた場合、追い越し操作を促してくれ、ウインカーを操作あるいは追い越しボタンを押し、ステアリングに手を添えることで、自動的に追い越しを行ってくれる。元の車線に戻る際にもシステムが自動的にウインカーを出し元の車線に戻るのでドライバーの疲労は相当軽減されることになる。

 目的地を設定しておけば、自動的に左側車線をキープするようになり、ほぼ半自動運転で走ってくれるのがありがたい。インターチェンジの出口に来るとACC機能が終了し、ドライバーに運転操作が切り替わり速度制御とステアリング操作が必要になる。非常にタイミングよく運転操作を切り替わると言えるだろう。また、行き先設定をしておけば、目的地の500メートルほど手前からEV走行できるようにバッテリー充電量を制御してくれる。さらに、ナビゲーションデータから上り勾配や下り勾配を読み取り、登り勾配ではエンジンを稼働させて燃費と発電を制御し、下り勾配部分では回生だけで電力を蓄えるなどの高効率バッテリーマネジメントを自動的で行う機能も有している。

 このように、新型セレナはe-POWERをより高度に進化させ、実用的なプロパイロット等と組み合わせることで、ドライバーにとってやさしく、また乗員すべてが会話をできるような静かな走行空間を保ってファミリー志向の強いユーザー層に大きくアピールすることができる内容となっている。

 残念に思うのは乗り心地に関する部分で、それはとくに路面のやや荒れた場所を通過する際にフロアの剛性不足に起因するような振動が感じられることだ。また、2〜3列目にも着座してみたが、とくに2列目での振動はシートのアームレストなどにもバイブレーションとして伝わってきていて残念に感じた。

 ちなみに、今回は車両姿勢で車体ロールを抑え、乗員の頭部が前後左右に振れるのを抑制。クルマ酔いを防止する効果を狙った要素も盛り込まれている。

 ハイウェイスターグレードにも試乗してみたが、走行に関するテイストは上級モデルのルキシオンと同等であり、プロパイロット2.0が装備されないことと、シート生地がファブリックになることを除けば、ハイウェイスターも同じようにe-POWERの新しいパワートレインが大きな魅力となることを示していた。

 装着タイヤは、上級モデルのルキシオンがブリヂストン・トゥランザ、またハイウェイスターはダンロップ・エナセーブでともに16インチである。タイヤ寸法を鑑みれば、もう少し乗り心地面で快適さが確保されていてもいいはずだ。2.8kPaとやや高めに設定されている空気圧なども乗り心地に多分に影響を及ぼしているといえるだろう。その辺は燃費を向上させることとのバランスが重要であり、今回はより燃費に特化した設定となっていたと言えると思う。

 乗員が常に8人乗れば総重量が大きくなり、そうした場面で十分な操縦性を得るためにも必要最低限な内圧だったのだろう。

 新型セレナは、このクラスのミニバンとしてこれからも高い人気を維持していくだけの資質を備えていることが十分に伝わり、確認することができた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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