どピンク! 空色! 若草色! 真面目の化身「優等生なクラウンセダン」は「色」で弾けまくっていた (2/2ページ)

クラウンだからこそもっと攻めた姿勢を取るべき

 そして、2015年10月に行われたマイナーチェンジでは、メーカーオプションとして「ジャパンカラーセレクションパッケージ」をアスリートに設定。「日本ならではの四季や時の移り変わりを表す色」としてセレクトされた全12色は、下記のとおりだ。

・紅(クレナイ)
・仄(ホノカ)
・茜色(アカネイロ)
・天空(ソラ)
・群青(グンジョウ)
・紺碧(アオ)
・白夜(ビャクヤ)
・翡翠(ヒスイ)
・常盤色(トキワイロ)
・胡桃(クルミ)
・黒曜(コクヨウ)
・白光(ビャッコウ)

 オプションとして注文を受けてから塗装するとはいえ、レギュラー色に加えて12色もの「それぞれ微妙に色味が違う、たぶんあまり数は出ないだろう選択肢」をきっちり用意するのはなにかと大変だったはず。おそらくはロス(無駄になる塗料)も出たに違いない。

 だがその「無駄」こそが、じつは「贅」なのだ。

 贅沢の「贅」という字は、「余計な財貨があり余っている」ということを表した会意文字(ふたつ以上の漢字を組み合わせて、元の漢字とは別の意味を表した漢字)である。大昔はお金として使われていた「貝」に、「余分」や「あり余る」を意味する「敖」を組み合わせたのが「贅」という字だ。

 つまり「贅沢」とは、「無駄なもの、余分なものがたくさんある状態」のことであり、その意味で14代目トヨタ・クラウン アスリートの後期型は、まさに「贅沢なクルマ」だったと言えよう。

 たとえばシルバー系のボディカラーが欲しいと思った場合、標準設定色である「シルバーメタリック」または「プレシャスシルバー」があれば、いちおうはなんの問題もない。だがそこにあえてそれらとは微妙に、しかし確実に違う「白夜」「百光」も用意されたことで、つまり「なくても困らないモノ」をあえて設定したことで、高級車としての14代目後期型アスリートは完成したのだ。

 筆者のような貧乏系ド庶民はどうしても物事に“効率”を求めてしまうが、高級車にとって、そしてそれに乗るお金持ちにとっては、“無駄”こそが重要なのである。

 その意味で、後継にあたる15代目トヨタ・クラウン(2018~2022年)に設定された「ジャパンカラーセレクションパッケージ」が全12色から6色へとスケールダウンされたのは残念だった。しかし、それでも「紅(クレナイ)」「茜色(アカネイロ)」「夜霞(ヨガスミ)」「翡翠(ヒスイ)」「碧瑠璃(ヘキルリ)」「天空(ソラ)」という計6色のジャパンカラーセレクションパッケージが設定された点に関しては、高く評価されなければなるまい。また、現行型(16代目)クラウンのチャレンジングな造形と「プレシャスブロンズ」などの個性的なボディカラーについても、同様に称賛する必要がある。

 だが本当は「レクサス」こそが、12色あるいはそれ以上の「ジャパンカラーセレクションパッケージ」的なオプション色多数を用意するべきなのかもしれない。

 例えば現行型レクサス RXも全11色の素敵で微妙なボディカラーを用意して頑張ってはいるが、「十分!」とまでは言えない。レクサスたるもの、もっともっとスペシャルなカラーをオプションで用意してほしいのである。

 無論、それが大変な作業であることは承知だ。だがそれぐらいの贅=無駄を追求しない限り、レクサスは欧米列強のプレミアムブランドを撃破できないようにも思えるのだ。


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

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