徐々にセダンピックアップの需要は減ってついに消滅
そして、1968年にベースとなっているシェベルがモデルチェンジしたのに合わせ、エルカミーノもモデルチェンジ。ベース車のシェベルのイメージそのままに、車体のセンターフラッシュやSSグリルなど、マッスルカーの文法どおりの出来ばえにアメリカの若者に大人気となったのです。
また、当時だけでなくいまでも三代目の人気は高く、レストアはもちろん、レストモッドの素材としても値段が高騰しています。アメリカだけでなく、日本国内でも同様で、特にこの三代目は人気が高いようです。
次の四代目(1973年)になると再びベース車両(マリブ)が変わってフルサイズに。マッスルカーの面影は消え去り、エンジンのラインアップは生産中ずっと5.7リッターのみといういささか寂しいシリーズです。途中、丸目2灯だったフェイスは角目2階建ての4灯になりますが、マッスルカーっぽくないからかどうにも不人気。アメ車マニアの友人からは「誰も知らない不人気エルカミ」と失笑されるほど。
ランチェロが1976年で生産終了となったのに比べ、エルカミは五代目が1978~1987年まで生産されたことで初代の惨敗をどうにか回復できたかと。サイズは再びミドルクラスへと変更され、よりエッジの効いたシャープなデザインとなりました。
このため、最大排気量エンジンは四代目5.7リッターのキャリーオーバーで、その下にV6エンジンが3.8/4.3リッターの2タイプが用意されるというクラスに即した排気量だったといえるでしょう。また、珍しくディーゼルエンジンが載せられたのも五代目のトピックスかと。これはGMがオールズモビル用に作ったもので、それこそ郊外やガチな農家向け需要を満たすもの。
最終的にはメキシコに生産拠点が移されて細々と作られ続けたものの、売れ行きは芳しくなかったため1年でディスコン。なので、もし1988年モデルという中古エルカミを見つけたとしたら(激レアだとは思いますが)メキシコ生産車だと思って間違いないでしょう。
ところで、人気だったTVドラマ「ブレイキングバッド」に出てきたのも五代目の初期モデル、角目2灯ランプで、SSモデルかのようなセンターフラッシュが印象的でした。ちなみに、ブレイキングバッドのスピンオフムービーは、その名も「ブレイキングバッド・エルカミーノ」とされていますが、とりたててクルマが活躍するわけでもありません。
また、ケビン・コスナーの大ヒット映画「ボディガード」では、彼が演じるわびしいボディガードが最終型のエルカミに乗っている姿が映りました。シートの調節もできない2シーター、ミドルクラス、しかもピックアップの中古車というと、少なくとも大成功を収めた主人公向けのクルマではないこと、この映画を観れば納得いくのではないでしょうか(笑)。