この記事をまとめると
■クルマに使われる素材「高張力鋼板」について詳しく解説
■「高張力鋼板」とはその名のとおり、高い張力を持つ鋼板のこと
■板厚を従来型鋼板より薄くすることができる
1980年代に車体剛性が重要視され始めた
最近のクルマに求められる性能は、なんと言っても低公害性だ。とくにエンジンが排出する排気ガスに含まれる有害成分に関しては、神経質になって管理する状況にある。現在の争点で言えば二酸化炭素だが、二酸化炭素の排出量を減らすには(最終的には排出量ゼロが求められているわけだが)エンジンの運転量/負荷を減らすことが大きなカギとなる。
ユーザーサイドから見れば燃料代の節約に直結する燃費性能も、大局的に見れば、燃費が向上することはその分だけ使用する燃料量が少なくなり、そのことは燃焼によって発生する二酸化炭素の発生量を抑えることにつながることを意味している。では、燃費向上に大きく効いてくる要素は何か? そのひとつが車重の軽減である。
車重の軽減は、いつの時代も自動車を作る側にとっての大きなテーマだったが、車体の軽量化と車体剛性の確保は、つねに相反する関係にあった。実際、車体剛性が自動車の設計で重要視され始めたのは1980年代のことだった。たとえば、1980年近辺に市販された新型車と1989年近辺に市販された車両の車体剛性を比べると、雲泥の差があった。わかりやすい実例で言えば、1981年に発売となった6代目R30型スカイラインと1989年に発売となった8代目R32型スカイラインで比べれば、一目瞭然である。
1980年代に車体剛性の重要性が認識され、1990年代になって車両形態の変化(セダン型からミニバン型へ)が生じ、2000年代に入ると総合的な意味で言う高性能化の道を歩み始めるようになってきた。こうした状況で、車体剛性を確保しながら軽量化を果たすことは自動車メーカーにとっての大命題となっていた。