この記事をまとめると
■タクシードライバー不足という業界の現状について解説
■ドライバーにも利用する人にもあまりいい状況ではない
■改善にはライドシェアサービスの導入が有効だと考える
コロナが落ち着いてタクシーがフル稼働状態に
タクシードライバーに対して3K(きつい、危険、稼げない)職業というイメージが定着して久しい。ただし、このうち稼げないということについては、現状では少々事情が異なるかもしれない。
一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会の統計によると、2022年1年間における全国平均でのタクシードライバー賃金の年間推計額は361万3300円となり、2021年比で80万9300円の増額となっている。もっとも高いのは大阪府の437万1600円(2021年比186万3800円増額)。ちなみに東京都は425万9800円(前年比89万700円増額)となっている。タクシー業界における営収(営業収入)や賃金に関する統計というのは見方が少々難しい。実際ドライバーとして従事しているなかでも働き方に大きな違いがあるからである。
タクシードライバーによる収入がメイン、またはそれしかない人はもちろん日々可能な限り売り上げを上げようとするが、なかには副業(こっちがメインかも)として自営していたりして、正社員ドライバーとして籍を置くことで社会保険関係をしっかりさせておきたいと考えて乗務している人もいる。こうなると、無理せずマイペースに日々乗務するケースが目立ってくる。このような働く人の多様化もあり、平均値がやや低めに出る傾向にあるのだ。そのため、たとえば東京における全産業労働者の賃金の年間推計額は598万9500円となっているが、実際はこれ以上稼ぐタクシードライバーが多くいるものと考えられるのである。
しかし、「タクシードライバーは、世間で言われている以上に稼げそうだ」と考えるのは早計。前年比で増額になる背景には新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いてきて需要が戻りつつあるということもあるが、同じく新型コロナウイルス感染拡大によりタクシードライバーから離職する人が多くなってしまった結果、稼働台数が極端に少ない状況が全国各地で続いていることも大きく影響している。
街なかのタクシー会社の車庫を注意深く見れば、多くのタクシー車両が置かれたままになっている。つまり、街なかを走っているタクシーが少ないなか需要が戻ってきており、実車(お客を乗せて走っている状況)走行中が圧倒的に多くなっているのである。筆者最寄りのターミナル駅前には結構な台数を停めることができるタクシープールがあるのだが、朝から晩までそこで待機するタクシーはほとんどいないのが現状。多少オーバーかもしれないがフル稼働状態が昼夜を問わず続いているのである。
そのため、時間帯によっては電話でタクシーの配車要請を行っても、「タクシーがいない」ということで断られることも珍しくなくなっている。駅前でたくさんのタクシーが客待ちしている光景はほとんど見かけることはなくなったが、出先からアプリなどを使って配車要請をすると意外にすんなりタクシーがやってくることがある。需要が多く街なかをつねにタクシーが走っていて、駅前よりはタクシーに乗りやすい環境になっているのかもしれない。