何度ステアリングを握っても緊張感あふれる「ミウラ」
続いてそのコックピットに収まったのは、「P400ミウラSV」。じつはこのSVで筆者は過去に2度ロングツーリングに参加したことがある。ひとつは映画「ザ・イタリアン・ジョブ(邦題ミニミニ大作戦)」のロケで使用された、サン・ベルナール峠の交通を完全に遮断して行われた、ミウラ生誕50周年の記念イベントでのこと。そしてもうひとつはその翌年、ミウラという車名の由来であるスペインの「ミウラ牧場」を、やはり同じSVで訪ねるというものだった。
だからといって、この美しいイエローのP400ミウラSVのステアリングを握ることにプレッシャーがないわけではない。後のカウンタックと並ぶランボルギーニの歴史を象徴するモデルのひとつなのだ。
4リッターのV型12気筒エンジンを横置きミッドシップするというパワーユニットレイアウトが生み出す突然の挙動変化の恐ろしさ、しかも現在のミウラがどれほどの価格で取引されているのかを思い出せば、やはり最初から全開でというわけにはいかない。
しばらくして自分自身がミウラの動きに慣れてくると、その走りの記憶が再び蘇ってくるようになった。ミッドのV型12気筒エンジンは官能的なサウンドとともに、最高出力で385馬力を発揮。このSVでは、サスペンションも強化型のスペックとなるが、コーナリングでブレーキングからシフトダウン、ステアリングを切り込みロールが収まるところでアクセルペダルを再び踏み込む一連の動きがスムースに決まるようになると、ワインディングでの走りも何より楽しくなる。
何もかもが電子制御で守られる現代の自動車のなかにあって、このミウラの時代にあったモデルたちは、かくも趣味的で楽しいモデルだったのだ。
そしてミウラを語るには、そのボディデザインの美しさに触れないわけにはいかない。かのマルッチェロ・ガンディーニがベルトーネ時代に描いたそのスタイルは、まさに究極の造形美といったところか。
それは今回同行した現代版12気筒ともいえるアヴェンタドールと比較しても、より魅力的に思えるほどのもの。だがその走りはあくまでも21世紀のスーパースポーツ。780馬力の最高出力を誰もが安全に楽しませるための各種デバイスの進化は、アヴェンタドールの世代でもっとも大きく進化した部分といえるのではないだろうか。
そしてあの快適なドライブフィールを体験すれば、それもまたGTのひとつと考えることも可能なのだと個人的には思う。