この記事をまとめると
■軽量化はクルマづくりにおいて重要な要素
■しかしマグネシウムホイールが普及しないのはなぜか?
■マグネシウムホイールの特性や弱点について解説する
2000GTやフェアレディZ432などに採用されていた
自動車を設計する際、重要度の高い項目として車体(車両)の軽量化が挙げられる。自動車を動く物体と捉えた場合、軽く仕上げるということは、走る、曲がる、止まるの基本3要素すべてにおいてプラスに作用することになる。軽ければ、その分だけ加速はよくなり、旋回運動の限界点は向上し、制動距離は短くなる。もちろん負担重量が軽くなるから燃費性能も向上し、二酸化炭素の排出量も抑えることができる。自動車にとって、軽く仕上げることの効果は、計り知れないほど大きなものがあるということだ。
さて、自動車の軽量化の歴史をたどってみると、材料工学との戦いだった一面が明らかになる。もともと自動車の構成要素は、鉄、木、革、ゴム、それにガラスあたりを組み合わせたものだったが、材料工学の進歩により、軽合金素材や樹脂素材が用いられるようになってきた。とくに、重量の多くを占める鉄素材が、軽合金素材や樹脂素材に代わったことで、軽量化や造形の自由度が増すという効果も生んできた。
今回は、「時おり目にするマグネシウムホイールがそれほど普及しなかったのはなぜ?」というテーマを編集部から示されたが、たしかに、日本でもマグネシウムホイールはかつての高性能車、トヨタ2000GTや日産フェアレディZ432、世界レベルでもポルシェ・カレラGT、ブガッティ・ヴェイロンといった超ド級スポーツカー、いわゆるスーパーカーで採用されてきた実績がある。
ふつう、ホイールといえばアルミホイールが頭に浮かぶが、アルミニウムではダメでマグネシウムでなくてはならない理由、あるいはその逆で、マグネシウムではだめでアルミニウムでなくてはならない理由を考えてみることにしよう。そのためには、まずホイール素材という条件を捨て、広範な視点でアルミニウムとマグネシウムの特性の違いを挙げてみることにしよう。