ゴルフの由来もメキシコ湾流から発生する風
1974年に発表された「ゴルフ」は、フォルクスワーゲンにとってはまさに待望の一台ともいえるモデルだった。そのデザインは、ジョルジョト・ジウジアーロによるもので、デビューから続々と魅力的な追加車種を設定。その歴史はもちろん現在にまで続き、現行型はじつに8世代目に相当する。
ちなみにゴルフとはやはり強風のメキシコ湾流を意味していると考えるのが一般的だが、フォルクスワーゲンはかつてスポーツモデルにゴルフボール型のシフトノブを与えたこともある。
このゴルフから派生したモデルにも、風の名が与えられた例は多い。初代ゴルフをベースに誕生した4ドアサルーンの「ジェッタ」は、ジェット気流にその名を得たものであるし、1993年にゴルフIIIから派生した「ヴェント」はポルトガルからイタリアに向けて吹く風を。また、その後継車となった「ボーラ」は、そもそもイタリアのマセラティが所有する登録商標だったが、フォルクスワーゲンとの話し合いにより新たにそれを使用することができるようになった。ちなみにそれはアドリア海沿岸などで冬季に吹く北風のことだ。
フォルクスワーゲンが1974年に発売し、一時その生産を休止したものの、2008年にはさらに美しいボディを得て復活を遂げた「シロッコ」も、風に由来する名を得た一台だ。
このシロッコとは北アフリカから地中海へと吹き込む、砂塵を含んだ熱風のこと。ちなみにマセラティが生産していたギブリは、このシロッコがリビアへと至ったあとの名前。
なぜ自動車メーカーは風の名を好んで自社のプロダクトに掲げるのか。それはやはり「風=空気」という避けられない存在に対しての率直な主張、そして速さへのイメージを物語るには最適な自然現象といえるからなのだろうか。