耐久王がまさかの惨敗
3位、4位は新鋭キャデラック。5.5リッターV8エンジンを搭載するキャデラックVシリーズ.R(LMDh=ル・マン・デイトナh)を3台投入。GMとル・マンの関係は意外に古く、1950年にカニンガム・キャデラック(プライベーター)が初参戦。2000年にはトップカテゴリーのLMP900クラスにキャデラック・ノーススターLMPをLM-GTSクラスにコルベットC5-Rを送り込み、アメリカ旋風を巻き起こしていた。とくに、LM-GTSクラスに君臨したダッジ・バイパー(オレカ)、その後を引き継ぐ形となったコルベット(プラット&ミラー)の強さは秀逸だった。
そのGMのキャデラック、今年のデイトナ24時間がデビュー戦となっていたが、初出場ながら3〜5位を獲得(優勝はアキュラARX-06)。今回もトップ2車からそれぞれ1周、2周遅れの4、5位につける健闘を見せていた。
ハイパーカークラスで注目を集めたのは、919で2015年から2017年までル・マンを3連覇したポルシェの復帰だった。ただ、今回のハイパーカー963は、バイザッハ直系の車両ではなく、ペンスキーが主導する車両作りでシャシー開発はマルチマチック社、エンジンがポルシェ918の流れを汲む4.6リッターV8の組み合わせとなっていた。LMDh規定に沿った車両作りだったが、実際、それでも周囲の目はポルシェだからと期待は高く、最上位で16位という結果はポルシェの名にふさわしくない惨敗ぶりだった。
昨年、日本の富士WECにも登場したプジョー9×8は、今回2台が参戦。LMHかLMDhかが注目されていた車両だが、結局LMH規定を採用。1895年、世界初の自動車レースとなるパリ〜ボルドー〜パリにも参戦(公式記録では優勝)した老舗のレースメーカーで、ディーゼルプロト時代の2009年に908 HDi FAPが常勝アウディを破って優勝。期待のメーカーのひとつだったが、今回はグリッケンハウスの2台に次ぐ8位といまひとつ不発。ノウハウを持つメーカーだけに、今後の巻き返しが注目される。
こうしたメーカー系ハイパーカーを相手に、プライベートコンストラクターながら善戦を見せたハイパーカーが、スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SGC、通称:グリッケンハウス)が出走させたグリッケンハウス007の2台だった。ハイパーカーながら、ハイブリッドシステムや4輪駆動方式は採用せず、3.5リッターV8ターボをミッドシップマウントするコンベンショナルなレーシングカーとして作られた車両で、今回のル・マンではトップから7ラップ、9ラップ遅れの6、7位でチェッカーを受けていた。
1923年に始まり、途中9回の中断(1936年、1940〜1948年)があったものの、今年で100年目、第91回を迎えたル・マン24時間は、これまでにない32万5000人の大観衆が見守るなかで盛況に開催された。次は9年後、第100回大会が開かれる2032年の大会が大きな節目となる。
個人的にだが、それまでトヨタには、スポーツカーレースを諦めることなく、ル・マンへの挑戦を続けていて欲しい、という思いを強くした。