実力が伴っているからこそ魅力にあふれる「二刀流」
ミニバンなのにオフローダー〈三菱デリカD:5〉
ミニバンなのにオフローダーというのも、ハードルはさほど低くはありません。とくに、オフロード性能というのは悪路を走ってみればパフォーマンスは一目瞭然。四駆性能はもちろん、アプローチ&デパーチャーアングルを確保した車体設計、あるいはオフ走行に特化した電制デバイスなど、それこそ命にかかわる場面で使われることすらあるのです。
デリカはD:5になる以前からミニバン(もしくはワンボックス)にオフロード性能をしっかり投入し、中途半端な4WDカーの脇をスイスイと走り抜けていった二刀流の元祖。オーストラリアの巨大な岩が混じった砂漠を、早まわしのようなスピードでクリアしていったのを見たときには言葉が出ないほど驚いたものです。
D:5は三菱の自信作「ダイナミックシールド」デザインが取りざたされることが多いようですが、しっかりデリカのDNAを引き継ぎつつ、最新のデバイスによって史上最強のオフ性能といっても過言ではありません。
また、ミニバンでディーゼルが選べるというのも現実的なメリット。世界を見渡しても、デリカD:5の二刀流に対抗できるクルマはそう多くありません。
ワゴンなのにスポーツカー〈ゴルフRヴァリアント〉
ステーションワゴンという後部重量が極端に増すボディをスポーティに走らせようとすると、技術的なハードルが一気に上がるわりにドライバーの快感は純粋なスポーツカーを走らせた場合より低いのが一般常識。古くはボルボがT5-RなんてワゴンをBTCC(ブリティッシュ・ツーリングカー選手権)にワークスで参戦させたりしていましたが(少なからず優勝経験あり!)、それとても緻密な過給チューニングやサーキット専用の足まわりだからこそ成立したもの。
一般道を走るワゴンで二刀流というのは絵にかいた餅に等しい、そう思っていましたが、ゴルフ8のワゴン版「R」、ゴルフRヴァリアントは最新デバイスのおかげでBTCCカーを凌駕するくらいのモデルとなっています。
とにかくトルクベクタリング4WDの出来が素晴らしく、誰が乗っても、どんなステアリング操作をしても爽快なコーナリングが楽しめます。カート上級者なみの走行ラインを描ける、といったらオーバーかもしれませんが、それだけ制御が緻密で「スポーティドライブ」を知り尽くしたセッティングということ。
もちろん、ゴルフ8のオーバークオリティともいえるシャシー性能や、320馬力/420Nmというターボエンジンのパフォーマンスとのケミストリーということもありますが、一度でも乗ってみれば「後部重量? なにそれ」てな感じ。
もっとも、カーゴスペースという二刀流の片方はいくらか犠牲になるかもしれません。とりわけ、ペットのワンちゃんなんかは0-100km/h4.9秒という加速力や、ちょっ速でコーナーをクリアしていくのを一緒になって楽しんでくれるとは想像しがたいですからね。
さてさて、二刀流なクルマはいかがだったでしょうか? もっとも、二刀流といえば聞こえはいいですが、大谷選手のように実力が伴っていなければ評判倒れで中途半端に終わってしまいがち。二刀流モデルをお選びになる際は、このあたりの見極めも重要かと。