準天頂衛星システムを使った測位方法も構築されている
GPSそのものは、アメリカが軍事目的で正確な位置情報の収集を図ったことが発端となっているが、現在では広く民生用に開放され、ナビゲーションシステム上では10m単位での位置測定が可能となっている場合もある。
システムの考え方は、地球上空(高度20000km強)の6種類の軌道を周回する複数の人工衛星から発信された信号を地上の受信機が受信。それにより緯度、経度、高度、時間情報を算出し地球上での自身の位置を測定するものだ。いわゆる三次元測定で、複数個の衛星情報により精度の高い位置測位が得られることになる。
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このGPSシステムの大きな特徴は、複数個の衛星が地球上空の軌道を定期的に周回することで、地球上どの地点でも衛星情報を活用することができる点にある。非常に大がかりな規模でシステム構築には多額の費用を要するが、国防の名のもとに実施できてしまうあたりは、さすがにアメリカの国力と言うことができるだろうか。
しかし、衛星を利用した測位システムは、じつはこのGPSだけに限ったものではなかった。地球上空の軌道上を周回するGPS衛星に対し、特定エリアのほぼ上空に位置する準天頂衛星システム(QZSS)を使った測位方法が構築されているのだ。この特定エリアとは日本のことで、内閣府の特別機関である宇宙開発戦略推進事務局が2010年に打ち上げた衛星「みちびき」の初号機がその発端となり、今年打ち上げ分の衛星を含めて7機体制での運用が計画されている。
システムの原理からもわかるようにGPS方式との併用が可能で、準天頂衛星を使うことから高精度な測位が可能となり、その精度は数cm単位とも言われている。もちろん、通常のルートガイダンスであれば、現状のGPS方式でも十分実用に耐え得る精度ではあるが、QZSS方式の導入で、自動運転システムの確立に向けて大きなプラス因子として作用することになる。数cm程度の測位誤差でマップマッチングを図り、道路、道路インフラ、周辺交通との関係を車両搭載の検知システム(レーダーなど)で確認することにより、安全性が高く、精度の高い自動運転システムを作り上げることも可能となる。
個人レベルでQZSSを活用することは当然無理だが、自動車あるいはそれに関わる企業が精度の高い測位システムを利用することで、今後の自動車像に大きな変化をもたらすことは容易に想像できる。近未来の自動車が、どんな機能・性能を備えてくるのか、興味津々である。