遊び心あふれるモデルがあってもいいじゃないか!
だが……ここでふと思う。「当たり前すぎて面白くない」と。
過去にパリダカで優勝したから「911ダカール」を作るというのはある種当たり前の発想であり、脈絡はあるが、意外性はない。それと同じことを「フェアレディZサファリ」でやってもダメだと思うのだ。
なにごともマジメに脈絡や文脈を重視してしまうのは、ドイツ人や日本人の悪い癖であり、つまらなさの元凶である。我々日独の民はイタリア人に学び、もっとめちゃくちゃにならないといけない。「荒野を260km/hで走れるウラカン」ぐらいの意味不明を志向しない限り、ブレイクスルーは起きないのだ。
であるならば……これしかあるまい。「日産GT-Rクロス」だ。
ニュルでタイムを出すために車高を下げるのは順当なところであり、誰もがイメージできる。だが、なぜか上げる。上げる理由は……わからない。とくにないとも言える。だがそれでいいのだ。「理由はとくにない」という点こそが、アートにおいては脈絡よりもずっと重要であり、上等であるだからだ。実際、オランダのファクトリーがGT-Rのクロスオーバーモデルを製作した実績もある。
画像は「Classic YOUNGTIMERS CONSULTANCY」がカスタマイズしたGT-Rオフロード“ゴジラ2.0”
トヨタ車で考えるのであれば、意外と「プリウス クロス」に勝機がありそうな気がする。
現行型プリウスの車高を44mmほど上げ、マッドタイヤを履かせたうえでさまざまなデザイン処理とオフロード向けの補強を行った姿は、遠目にはランボルギーニ・ウラカン ステラートに似ているはず。まぁ近くで見るとぜんぜん違うことはすぐバレるのだが、それはそれでいいじゃないか。ランボルギーニ・ウラカン ステラート調のプリウス クロス、たぶんちょっとカッコいいですよ。
そのほかのトヨタ車では、オフロード走行もこなせる作りとビジュアルにした「プロボックス クロス」も、まあまあイケてる仕上がりになるだろう。だが、たぶんあまり売れないのではないかと思う。
なぜならば、プロボックスについてはすでにユーザー自身が勝手に、思い思いのスタイルでオフローダー系のカスタマイズを楽しんでいるからだ。そこにメーカーが出張って行って「はい、みなさんコレを買ってください!」とやっても、人々の心を打つ結果にはならないだろう。
これは、人々が初代bBで思い思いのカスタマイズを楽しんでいたところに、2代目bBで「最初からカスタム済み」みたいなメーカーお仕着せバージョンが発売されても、人々の心はほとんど動かなかったのと同じ種類の話である。また、仮に「ハイエース クロス」を出しても、プロボックス クロスとおおむね同様の結果に終わるだろう。
そのほかではスバル・レヴォーグのクロスオーバー版はけっこうイケると思うが、これはまあメーカーが実際に発売するらしいので(!?)、本稿の出る幕はない。スバルにやっていただくほかないというか、けっこう売れそうな気はする。
さらにそのほかでは……、筆者はあまりイメージできなかった。例えば日産ノート オーラは大好きなクルマだが、それをクロスオーバーにしたところで「……だからなんなんだ?」以外の感想は生まれない。実際に近いキャラクターとしてノートオーテッククロスオーバーもあるわけだし。
とにかく私のイチ推しは「プリウス クロス」と「GT-R クロス」だ。とくに見たいのはプリウス クロスだろうか。意味不明だが、そこが逆にいいのである。