そういや「1」と「2」はなんでない? フォルクスワーゲンのEV「ID.」シリーズの謎 (2/2ページ)

ID.BUZZ登場で気になるID.ゴルフは出るのか?

 そして、このID.5の兄弟車としてID.6というEVもありまして、当初こちらはEV大人気の中国専用モデルとして発売されていました。中身はほとんどID.5と変わらないのですが、3列シートというのがキモ。いまでは中国から陸続きの中東などでも販売されており、ID.4と並びなかなかの人気モデルに成長中。

 もちろん、険しい道の多い大陸のことですから、4MOTION、すなわち四駆モデルに人気が集中していることも納得です。

 で、6に続くID.7なんですが、今度はセダンというスタイルで登場しそうです。と言っても、ご覧のとおりロングルーフを採用し、リヤセクションはハッチバック調。クロスオーバーのID.4と見紛うようなフォルムですが、ID.5をクーペと呼ぶぐらいですから、フォルクスワーゲンならこういうのをセダンと呼んでも不思議ではありませんね。

 ただし、全長が5mとなり、搭載バッテリーにも余裕が出たのか最大航続距離は700kmを謳っています(WLTPサイクル)。うまく走ればベルリンからブリュッセルくらい行けそうですから、かの地では喜ばれるかと。こちらはヨーロッパで2023年のうちに発売予定で、北米への導入は2024年が予定されています(国内導入は未定)。

 さて、これまでID.史上もっとも注目度が高かったのはVWバス(タイプ2)をモチーフとしたコンセプトモデル「ID.BUZZ」ではないでしょうか。市販モデルがようやくドイツで発売され、2024年には日本への導入も決まっているようです。レアなワンボックスタイプのEVということに加え、往年のスタイルを彷彿とさせるなど、人気があがる要因はいくらでもありそうです。

 MEBシャシーが用いられることはもちろん、新たな電気駆動ユニット「APP550」が導入されるのも間違いないところ。これは、従来よりも環境負荷を減らしたことがトピックであり、MEB専用ゆえにモジュラー的な展開も可能。平たくいえば、フォルクスワーゲンのEVは基本的な構成を画一化できることになり、コスト削減しやすくなったということかと。

 そのわりに、ドイツで6万5000ユーロ~という価格(およそ940万円)はまあまあ強気(笑)。国内導入されたら、フォルクスワーゲン最高値モデルになりそうな気配でしょう。

 ちなみに、ID.シリーズは3から販売がスタートしているため、「1や2はどこいった?」と不思議に思う方も少なくないはず。2については、最近になって市販を想定したプロポーザルモデルが発表されました。2025年発売予定のスモールEVで、航続距離450km、価格は2万5000ユーロ以下を想定しているとのこと。ポロにも似たプロポーションなので、ここらあたりからICEモデルのスタイルエッセンスを加えていくのかもしれません。

 また、1についてはフランクフルトモーターショーでお披露目された最初のID.のことを指しているのかと思いきや、ID.2よりもさらに小さなEVを計画中で、これがID.1と名付けられるとのこと。どんな基準を設けているのか分かりませんが、数字の割り振りにクセが強いですよね。

 こうしてID.シリーズを俯瞰してみると、フォルクスワーゲンの本気度がひしひしと伝わってくるようです。そこへもってきて、既述のようにEUが全面EV指示を撤回しちゃうとなると、VWとしては微妙、というより梯子を見事に外された観もあり。せっかくいずれはID.ゴルフと名付けたモデルを出そうかと目論んでいたはずなのに、出すタイミングが難しくなったかと。

 いっそのこと、現行ゴルフをマイナーチェンジでお茶を濁しつつ、ID.のほうはe-Golf2なんて意表をついてみたらどうでしょう。見分けるポイントはグリルの有無とかなんとか、いまのフォルクスワーゲンならやりかねませんからね。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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