「競合車と競わせる」「用品や車両本体の値引きに固執」! いま昭和的な「新車購入の商談」はディーラーマンに敬遠される!! (2/2ページ)

商談の効率化で素早い成約が好まれる

 そして、2020年5月よりトヨタ系正規ディーラーすべての店舗ですべてのトヨタ車が購入できるようになった。じつはこれが他メーカー車同士で値引き条件を競り合わせるような商談を過去のもののようにすることに拍車をかけた。

 全店舗で全トヨタ車が買えるようになったが、依然として多くの地域では資本の異なるトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店が存在する。とくにカローラ店やネッツ店は同一地域内に資本の異なるディーラーが複数存在することも多い。つまり、トヨタ車を本命車としてトヨタ車同士で値引きを競わせるという新車の買い方が増えることとなり、よほどトヨタ以外のメーカーで興味のあるモデルでもなければ、そしてクルマ自体にそれほど強い思い入れがなければ、トヨタ車だけでスンナリ新車購入するといった動きも目立ってきたのである。

 また、商談の効率化というものも進んでいる。販売現場ではセールススタッフ不足が深刻となって久しい。そのような人員不足のなかで新車を販売していおり、商談一件当たりにかける商談時間を短くできるセールススタッフがより優秀と評価されるようになった。そのため、昭和のころのようにライバル車をゾロゾロしたがえて複数回の商談を好むような客については、「購入意思がそれほど固まっていない」と判断される傾向が強まっている。

 新車を買う側も1回で数時間かかる商談を複数回繰り返すことを好まない(とくに週末しか商談できなければなおさら)人も増え、そのような人はあらかじめメーカーウェブサイトで研究して本命車を絞り込み、見積りシミュレーションを活用し、だいたいの自分の希望予算を絞り込んで本命一本でリアルな商談に臨むことも増えている。セールススタッフの多くが昭和タイプの商談を苦手とすることもあると聞く。

 現金一括払いならば、まだ昭和のころのようにじっくり腰を据えて値引き交渉ということもあるかもしれない。ただ、現状では残価設定ローンを利用した新車購入が主流になろうとしている。残価設定ローンを利用すれば長くても5年ぐらいで乗り換えることになるので、ディーラーとしても短期間で乗り換えてくれる残価設定ローン利用客をメインターゲットとしているのである(10数年以上など長期間乗り続ける人は現金払いが多いと見ているようだ)。短いサイクルで乗り換えてもらえる客を優先するのは商売上やむを得ないのかもしれない。

 また、残価設定ローンを使えば、交渉は「月々いくらにしたい」というのがベースとなる。セールススタッフはその希望に合わせて調整するだけなので、商談に費やす時間もセーブすることができるのである。つまり、値引き額で損得勘定する人もかなり減っているのだ。現金払いであっても、「支払総額で300万円になればいい」といった交渉が多いので、車両価格、用品など、それぞれの値引き額に固執しているとゲーム感覚という印象も強くなるし、いまどきでは「SNSなどで商談や値引き条件などを公開するつもりでは?」などとも勘繰られやすく、かえって条件拡大が進まないケースもある。

 昭和レトロブームとはいうものの、昭和のころの新車の買い方は令和の世の中の効果はかなり薄れており、勢いが復活するということもまずなさそうだ。ただし、どのようなスタイルで商談するかはあくまで自由なので、昭和の買い方を全面的に否定するつもりはない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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