ミニバンでは助手席がもっとも車酔いしにくい
では、いちばん快適な空間に思える2列目シートはどうでしょうか。オットマンなどがついた豪華なシートが備わる車種もあり、リラックスしてくつろげそうですが、じつは2列目シートの乗り心地が期待どおりに良いミニバンというのはあまり見当たりません。というのも、2列目シートの左右には大きなスライドドアが備わっています。これはミニバンの便利さを象徴するような重要な装備ではあるのですが、ボディ剛性という面で考えるとものすごく不利。こんなに大きな穴がぽっかり空いているのですが当たり前なのですが、どうしても路面から伝わる振動やGなどが抑えきれないことも多くなってしまいます。各メーカーとも、この不利な条件を克服しようとボディ剛性向上に努めており、昔に比べたら飛躍的にガッシリとしてきましたが、2列目シートも車酔いにはあまり条件のよい席とはいえないでしょう。
ただし、眠ってしまうことで車酔いを防げるという人にとっては、シートにさまざまな機能がついていてリラックスした姿勢が取りやすいという点で、2列目シートが向いていると考えることもできます。最近は2列目シートにもシートヒーターが備わったり、エアコンの温度が個別に設定できる車種もありますので、快適な温度を保って眠りやすくすることもできると思います。
こうして消去法でいくと、ミニバンでは助手席がもっとも車酔いしにくい席だといえます。車酔いの原因には視覚や嗅覚からの不快感やストレスも当てはまり、たとえば後席に座っていると視界の大半が目の前にある席になりがち。クルマが交差点を曲がった時に、その動きを感じて内耳は体が移動しているという信号を送るのに対して、視覚は移動していないという信号を送ってしまい、脳が矛盾した情報を受け取ることで混乱し、吐き気など車酔いの症状を発してしまうといいます。
これを防ぐためにも、なるべく外の景色が見えて明るく開放的な空間に座るほうがいいのです。ポイントは、近くの景色ではなく遠くの景色を見るようにすることと、うつむいてスマホやゲームなどをしないこと。新鮮な空気を吸うようにしたり、トラックやバスなどの後ろを走る時にはエアコンを内気循環に切り替えるなど、匂いによるストレスにも注意するといいですね。車内で喫煙したり、匂いの強い食べ物を出さないように、同乗者にも協力をあおいでください。
さて、こうしたミニバンの車酔い問題にはメーカーも気づいており、ホンダではミニバン購入意向のあるユーザーへインタビューしたところ、80%近くの人が車酔いしにくいクルマがあれば欲しいと回答したそう。そこで現行ステップワゴンの開発時に車酔いのしにくさを研究し、視界やシートの座り心地、音、頭が揺れないための工夫などを取り入れているといいます。
そして日産の新型セレナでも、日産独自に車酔いの原因を研究し、不快な揺れ、視界、車内の匂いに関して改善。とくに匂いに関して、新車臭がイヤだという人が多いことを受けて、全ての室内部品を見直して新車臭がしない部品を開発したというから、驚きです。
そんなわけで、ひどい車酔いに悩む人はこうしたミニバンを選んだり、座るシートを変えたりすることで、少しでも快適なドライブができることを願っています。