このご時世に目立った値上げをしない日本車! 一方で「新車の値引き」ができなくなっていた!! (2/2ページ)

ディーラーは販売の新たなスタイルを模索している

 また最近目立つ、ある意味値引き余力の少ない価格設定は将来的にはオンライン商談の普及へもつながるものと考えている。現状ウェブ会議システムなどを活用したセールスマンとのリモート商談では、値引きアップの決裁を上司にあおぐためにセールスマンがフレームアウトするなどして、なかなか商談自体が盛り上がらないとも聞く。将来的にはトヨタの個人向けカーリース「KINTO」の申し込みのように、ウェブサイトのフォームに入力しながら新車を発注していくことになっていくことも十分考えられる。生成AIと会話をしながら画面入力を進めれば生身のセールスマンが介在しなくてもすむだろう(ローン計算も自動的に行ってもらう)。

 そうなれば、いまのような値引き交渉ではなく、値引きがあったとしてもクーポン適用や、タイムセールのようなその時に買おうとしている人なら誰でも同じ値引き条件となるようなスマートな買い方となり、若い世代ほどそうした価値観にフィットするので、この先は問題なく受け入れられていくものとも考えている。今後もセールスマン確保が厳しい状況が進むなかでは、長い目で見れば、オンライン販売の窓口をメーカー(メーカー系子会社)に集約し、現在の新車ディーラーはアフターメンテナンススポットとしての役割をメインとした(店頭販売も細々と継続する)、新車販売の後方支援的立ち位置になっていくのではないだろうか。

 幸いと言っては語弊があるが、昨今ディーラーは収益悪化もあり、いままでは下取り査定額に値引き不足分を上乗せすることは半ば当たり前であったのだが、最近はそれもままならなくなっている。日本は諸外国に比べ新車を買ったディーラーに乗っていたクルマを下取りに出す比率がかなり高かった(新車を売るため採算度外視した値引き補填があるため)。そのため、オンラインで商談を進めていても、下取り対象車をディーラーに持ち込み査定を受けるなど、結局ディーラー店舗へ足を運ぶことになってしまう。アメリカでは乗っていたクルマは個人間売買で売却するのが主流となっているので、オンライン販売も馴染みやすくなっている。日本において今後下取り査定額への値引き不足分の上乗せが期待できなくなれば、買い取り専業店への売却が増えていくだろうし、さらに新車購入の諸手続きの変更なども伴えば、日本でもアメリカのように一度も店舗に足を運ぶことなく(新車のデリバリーサービスというものがあるらしい)新車を購入して納車も可能となるので、オンライン商談の使い勝手がかなり良くなるはずだ。

 すでに最近登場している日本メーカーの新車でも、メーカーオプションのシンプル化が進んでいる。これもコスト削減もあるのだろうが、オンライン商談の普及には追い風となっていくはずである。

 とはいっても、新車購入すべてをオンライン化せよと言っているわけではない。現実問題として、新車購入に際して店舗に出向き、面倒な値引き交渉をしないと新車を購入できないことへ抵抗を示す人は増えているように見える。従来の対面販売は残しながらも、オンライン販売も充実させていくのは、セールスマン不足もあり自然の流れのように見える。

 そのなかで、あえてこのタイミングでも、フルモデルチェンジしても車両価格が目立ってアップしていないモデルの存在は、今後の新車販売の新たなスタイルを模索しているようにも見えるのは、けっして錯覚ではないものと考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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