イマドキのクルマは高くなった……とも言い切れない! 昔と今の車種の「値段」と「中身」を比べてみた (2/2ページ)

物価や所得も変化している

 クルマの価格を現在と過去で比べる時に注意すべきは、物価と所得の推移を補正することだ。1995年以降の物価と所得は、今とほぼ同じだから、機能や装備と価格を単純に比べられる。しかしそれ以前の時代と比較する時は、補正を行って、昔の価格を今の価値に換算せねばならない。

 たとえば安さで有名なクルマとして、1979年に47万円で発売された初代アルトがある。この年の大卒初任給は約11万円で、今は約22万円だから、2倍に高まった。

 つまり初代アルトの47万円を今の価格に換算すると、2倍の94万円になる。今のクルマの価格を見ると、100万円以下の車種は軽自動車でもきわめて少ないが、物価や所得の推移を考えれば当然だろう。47万円で登場して歴史に残る激安のアルトでも、今の価値に換算すれば、94万円に達するからだ。そうなると今の時代に100万円以下のクルマが少ないのも納得できる。

 そして1979年に47万円で登場したアルトは、軽商用バンとして開発することで、当時の車両価格に含まれた物品税を非課税にしている。物品税が課税されたら、47万円の低価格は実現できなかった。さらに初代アルトは装備も徹底的に省き、ラジオや時計だけでなく、左側の鍵穴まで装着していなかった。

 一方、現行アルトAの価格は94万3800円だから、物価や所得を補正すれば、1979年当時の47万円とほぼ同額になる。その現行アルトAには、横滑り防止装置、4輪ABS、運転席/助手席/サイド/カーテンエアバッグ、エアコン、パワーステアリングなど、各種の装備が豊富に装着されている。鍵穴まで省いた初代アルトに比べると、実質的な買い得度は大幅に強まった。いい換えれば現行アルトは、47万円のアルトと比べても、大幅に値下げされているのだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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