「ETC」じゃない「ETCX」って何もの? 何はともあれ登録して使ってみた! (2/2ページ)

ETCとETCXの相違点料金所では一旦停止

 せっかくETCXが使えるのだ。実際どんなものか試してみたくなる。渋滞覚悟で晴天のゴールデンウィーク真っ只中、ETCX適用の有料道路のある伊豆・箱根方面にクルマを走らせた。取材というテイなので助手席にはカメラマンのキムラ君に座ってもらう。

 筆者同様、彼もETCXを理解していなかったひとり。道中の会話で、根本的な誤解をしていたことがわかった。

「てっきりETC2.0のバージョンアップ版だと思い込んでいました。ほかの人から聞いたんです。いま使っているETC車載器(+アンテナ)は使えない。買い換えなきゃいけないんだ、と。お金かかるじゃないですか? 登録費・年会費もいらないんですか?だったらいいっすね!」

 いま使っているETC車載器やETCカードがそのまま使えるのもETCXの大きなメリットなのだが、存在が知られていないというのは恐ろしいもので、ヘンな噂が勝手にひとり歩きしているようす。

 かくも認知度の低いETCXだが、それは、適用有料道路の料金所をしばらく観察していてもよくわかった。箱根ターンパイクでは誰ひとりキャッシュレス(ETCX)で料金所を通過する人はおらず、支払い・お釣りの授受に手間取る四輪・二輪が原因で渋滞が発生。

 これまた大渋滞の伊豆中央道では、数カ所並んだ料金所ブースのうち一番左側がETCXの専用レーンになっていたが、そこに向かうクルマはゼロ。まだまだETCXが認知されていないことを知るとともに、渋滞の列を尻目にサクサク料金所を通過する快感を味わうことができた(かつてのETC黎明期も確かこんな感じだったな)。

 ちなみに、高速道路のETCレーンと有料道路のETCXレーンでは、車載器から発せられる電波を受信するアンテナの仕様が異なる。高速道路の料金所は従来どおりノンストップで通過できるが、有料道路の場合は、料金所で必ず一旦停止が求められるので念のため。

決済はタッチレス&キャッシュレス

 有料道路をキャッシュレスで通行可能なことからもわかるように、ETCが高速道路の通行のみの適用に対して、ETCXはおサイフケータイと同様の機能も兼ね備えている点にとくに注目したい。

「ETCXのシステムを活用すれば、駐車場やガソリンスタンド、ファストフードのドライブスルー、あるいはEV充電スタンドやカーフェリーの利用など、いままで現金やクレジットカードで支払っていた施設も、おサイフケータイのようなタッチも不要で、キャッシュレス決済が可能。今後、利用シーンをどんどん広げていきます」と、語るのはETCソリューションズ株式会社取締役の斎藤正さん。

 現在のETCXの課題は、前述した認知度の低さに加え、利用可能な施設の少なさもある。

 一部の駐車場や、ファストフードのドライブスルーでは試験運用もされていて評価を得ているものの、現状はと言えば、有料道路が関東で1カ所、東海は3カ所、近畿に1カ所(鳥飼仁和寺大橋有料道路)。ガソリンスタンドは愛知県新城市に1カ所と、全国でわずか6カ所でしか利用できないのだ。

 無理もない。ETCXの電波を受信するアンテナなど、設備には相応のコストが必要で、加盟する側の施設にもおいそれと導入できない事情があるのだ。

 それでも、他人との接触機会を減らし、現金に触れずにすむ感染症予防効果なども含め、ユーザーメリットがきわめて大きいのは間違いない。

 そもそも、国(国土交通省)が推進しているETCに対して、ETCXはあくまでも民間レベルのプロジェクト。なにせ規模が違う。しかも、サービス開始は2021年4月。

 まだ1年しか経っていない。「会員数は徐々に増えつつあり、今後数年をかけて加盟店を1万カ所に、会員数を1000万人に増やすことが目標です」(前出・斎藤さん)。

 正直、いまのところメリットは少ない。しかしデメリットもない。たまたま利用可能な施設の近くに住んでいる人なら、まずは会員登録して、ぜひその便利さを体験してみてほしい。

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております


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