海外市場を想定したクルマ作りは日本市場とミスマッチ
こうなると、もはや取り返しが付かない。
たとえば日産の場合、軽自動車のルークスとデイズ、コンパクトカーのノート、ミニバンのセレナを合計すると、国内で販売される日産車の60〜70%に達する。
ホンダでは、N-BOXだけで、国内で売られるホンダ車の35%を超えてしまう。国内で売られるホンダ車の3台に1台以上がN-BOXだ。軽自動車全体になると、国内で売られるホンダ車の60%近くに達して、コンパクトなフィット/フリード/ヴェゼルまで加えると、80%前後を占めてしまう。
当たり前の話だが、海外向けに開発された国内市場を大切にしないクルマは、国内の売れ行きも伸び悩む。その結果、国内市場全体で見ると、軽自動車の販売比率が40%近くに達した。
かつての軽自動車は、価格や税金が安いために好調に売れたが今は違う。日本のユーザーのために開発された数少ない商品だから、人気を高めているのだ。
逆を言えば、海外向けに開発されたクルマは、いずれも売れ行きを低迷させている。先に述べたとおり、内外装のデザインから乗降性などを含めた使い勝手、運転感覚まで、すべてが日本のユーザーに合わないためだ。その結果、日本の自動車市場は、軽自動車と少数のコンパクトな車種だけで占められている。
そしてクルマに対する好みや価値観が、海外のユーザーに近い人達は、輸入車を選ぶ。海外向けの日本車よりも、海外で海外の人達に向けて開発された輸入車のほうが、好みやニーズに合うからだ。
言い換えれば海外向けの日本車が、日本国内で販売を低迷させるのは、車両のコンセプトやクルマ作りが中途半端であるからだ。共感を得られるのは、日本のユーザーを見据えた日本車と、すべてを海外の価値観で開発された少数の輸入車に限られる。日本のメーカーが、日本のユーザーに海外向けの商品を提供しても、購入されないのは当たり前だ。