何台の販売が見込めるかがEV戦略では重要
一方、今回のトヨタ、ダイハツ、スズキの3社は、十数年に及ぶ日産と三菱自工のようなEV生産と販売の経験がなく、原価低減策は限られるといえそうだ。したがって、開発や製造面での原価切り詰めとは別に、販売台数での効果も狙ったのではないか。
発表の文面を詳しく読むと、「スズキとダイハツの小さなクルマ作りのノウハウと、トヨタの電動化技術を融合し、軽商用車に適した電気自動車を3社で共同開発した」とある。トヨタのbZ4Xは高価な乗用EVだが、かねてよりトヨタにはE-FOURと名付けた電動4輪駆動があり、たとえばその後輪モーターは40kWの出力で、サクラやeKクロスEVの47kWに近い。そうしたモーターを活用する案はありそうだ。
また、スズキは独自に軽商用EVを開発してきており、軽商用EVのためのモーター駆動プラットフォームの開発が進んでいたのではないか。そうしたことが、3社共同の利点として想像できる。
また、軽商用EVでは、ホンダが先んじて開発を進めてきた。そして、すでにヤマト運輸と使い勝手の検証に入っている。当然、原価の見通しも厳しく見てきたと考えられ、詳細は明らかではないが、そこにスズキやダイハツが単独で挑むには障壁が高かったかもしれない。
さらに想像を加えれば、マツダはこれまでスズキの軽自動車を自社の車名で販売している状況もあり、また提携関係にあるSUBARUはダイハツの軽自動車を販売しているので、トヨタ、ダイハツ、スズキで扱う軽商用EVをマツダやSUBARUでも販売するとなれば、さらなる台数の積み上げも叶うだろう。
提携当時、トヨタとスズキやマツダの関係がどう広がっていくか具体的な方向は見えにくかった。ここにきて、EV戦略での利点が生まれるかもしれない。それほどEV導入は国内各社にとって喫緊の課題となっている証ともいえる。