レース中「真っ赤に光る」ブレーキ! その先は白→透明化する!? ブレーキの専門家にこの現象について聞いてみた (2/2ページ)

24時間レースではブレーキアイテムを交換しているチームが多い

 さらに低温の状態もブレーキにとっては厳しいコンディションのようで「温度が低すぎてもブレーキが利かない。とくにストレートエンドは一番、ブレーキが利かないといけないところなんですけれど、冷却されているので利きづらい。100℃未満でストレートエンドを迎えるのはちょっと怖いです。気温が低い時や夜間セッションなどは厳しいので、温度が下がりすぎるようなら冷却ダクトをクローズした方がいい。理想としては、300℃ぐらいは保っておきたいし、ある程度、温度が高いほうが発熱したときのエネルギー量が多いのでブレーキは利きます。クルマが許容できるのであれば500℃ぐらいで走り続けたほうが、ブレーキに対する効率はいいと思います」と語る。

 まさにレーシングカーに欠かせないブレーキは温度によって効果が変わってくることから、そのコントロールが重要だが、24時間レースではブレーキアイテムを交換しているのだろうか?

 これについても稲本氏は「クルマやコンディションによって違いますが、富士24時間レースでは10分間のメンテナンスタイムが設けられているので、ブレーキ部品を替えているチームが多いです。パッドだけを交換しているところもあれば、ローターとパッドをだけを交換するチーム、あとは作業効率を考えてキャリパー、ローター、パッドと一式で交換するマシンもありますし、フロントだけアッセンブリーで交換するチームもあったりします」と解説。

 さらに「チームやクルマによっては“ブレーキ無交換”で走破することも可能です。実際、2022年の大会にENDLESSSPORTSはメルセデスAMG GT4に当社のブレーキシステムを採用したマシンでST-Qクラスに参戦していたのですが、ブレーキは無交換で走り切ることができました。ニュルブルクリンク24時間レースでは、今でもクルマによっては無交換で走破しています。過去にはポルシェのワークスチームとして活動するマンタイレーシングなども無交換でニュルブルクリンク24時間レースを勝っていました」と稲本氏は付け加える。

 このようにブレーキひとつをクローズアップしても、24時間レースにはさまざまなストーリーが満載。だからこそ、一昼夜をかけて争う耐久レースは魅力満載なのである。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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