ボルボにコルベットZ06のエンジンをぶち込んだ「ボルベット」! 遅刻魔の「ポールニューマン」に贈られた最強ワゴンの中身 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■俳優でレーシングドライバーのポール・ニューマンはボルボのワゴンを好んで愛車としていた

■過去に所有していた3台のボルボはいずれもエンジンを高性能なものにスワップしていた

■ボルボV90にはコルベットZ06のエンジンがスワップされ「ボルベット」と呼ばれていた

カーガイのポール・ニューマンが愛したステーションワゴン

 ニューマン物がまたまたオークションで高額落札! というニュースを聞けば、ちょっと知ってる方なら「ロレックスのクロノグラフでしょ」となるかと。俳優とレーサーといういまでいう二刀流だったポール・ニューマンは、レースの際に好んでロレックスのクロノグラフ「デイトナ」を身に着け、それはのちに「ニューマンモデル」として珍重されることに。実際に彼が身に着けていたデイトナは、20億円という時計として史上最高値で落札されています。

 が、今回はクルマ、しかもボルボのステーションワゴンというなんともニューマンに似つかわしくない地味なもの。それこそ、彼が乗ったSCCA仕様のダットサンとか、ニューマン・スカイラインなら納得なんですがね。

 ところで、ポール・ニューマンは自らの名を冠したドレッシングやパスタソースを販売していたこともご承知のとおり。料理が趣味でもあったニューマンは、俳優業がスランプ(成功作に恵まれなかった)だったころ、冗談半分で「ニューマンズオウン」という会社を設立し、自らのレシピによる商品を販売し始めたのです。これらはオーガニックなんて言葉が流行る前から天然素材を活用したもので、予期せぬ大ヒットとなったのです(実際のところ、まあまあ美味しいです)。

 で、ニューマンは試作品をどしどし作って工場へと自ら運んだというのですが、その際のアシがボルボのステーションワゴン「740」だったのです。が、740の鈍足ぶりに嫌気がさしたニューマンは、さすがレーシングチームを持っていただけあって「そうだ! エンジンスワップしちゃえ」と思いつきました。

 アメリカは車検制度が我が国と違うため、エンジンの換装はわりとポピュラーなカスタム。とはいえ、主流はマッスルカーとか商用トラックのエンジン。さらに、当時のボルボはアメリカではブサイク、不格好とネタになるようなメイクスだったのに、なんとも思い切ったアイディアではありませんか。

 で、選ばれたエンジンはビュイック・グランドナショナルに積まれていた3.8リッターのV6ターボ! およそ300馬力を発生するエンジンに、トランスミッションはポンティアック・ファイヤーバードの5速マニュアルがコンバインされ、にわかにニューマン740は「フライングブリック(空飛ぶレンガ)」へと生まれ変わったのでした(ちなみに、フライングブリックの祖先は1984年からヨーロッパツーリングカー選手権を破竹の勢いで突き進んだ240ターボ)。

 もちろん、空を飛ぶような勢いですから、サスペンションやタイヤも強化パーツがおごられたのはいうまでもありません。それでも、ニューマンのセンスの良さはボディに妙な手を加えなかったことでしょうか。派手なエアロパーツはもとより、これ見よがしなエキゾーストパイプなど突き出していないところなど「さすがに、わかってらっしゃる」感じです。

 もっとも、ほめるべきはボルボの堅牢なボディワークでしょう。重くて大きな鋳鉄ブロックをエンジンベイに乗せて、しかも社外のミッションケースを収納してもしっかり走ってくれたのですから。で、これに味をしめたニューマンは2台めのボルボ・ステーションワゴンに手を出すことになるのです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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