超ド級お金持ちのための「クルマのテーマパーク」! マガリガワに潜入したら値段も施設もアゴが外れるほど衝撃だった (3/3ページ)

ティルケが手がけた珠玉のコースを疾走!

 目眩がするほどの施設の数々を見せつけられたところで、いよいよお待ちかねの「THE MAGARIGAWA CLUB」のメインディッシュ、コースを走るときがやってきた。

 コースの全長は3.5kmと国際レーシングコースに近い長さを誇り、上り勾配20%、下り勾配16%、ストレートは800mというスペック。コーナーは22箇所あり、標高差は80mだ。ストレートではマシン次第ではMAX280km/hまで出せる計算だという。コース幅は10m前後となっており、狭く感じるかもしれないが、これは 何度か述べているように「サーキット」ではないからだ。腕に物を言わせて追い越し&追い抜きをする場所ではないので、このようなスペックになっているという。

 コースのデザインは、世界中の名サーキットを手掛けてきたデザイン事務所「Tilke Engineers & Architects(以下:ティルケ)」によるもの。なので、ただ線を引いて素人が作ったコースでないことは、このことからもおわかりいただけるはず。ただし、ここは前項でも述べたようにサーキットではないので、ティルケ側は「FIAの基準や観客席のことを考えないで思う存分デザインできたから凄く楽しい仕事だった」と語る。

 コースの舗装は日本の大手ゼネコン「前田建設」によるもので、アスファルトの舗装も段差を極力無くして滑らかなになるように手がけている。これにより極上の走行フィーリングを味わえるのだ。

 コース各所には、近年各サーキットへ導入が進んでいるデジタルフラッグを各ポストに設置。マーシャルはいないが、コース全域を監視する管理室があるので、そこで安全を管理する仕組み。なお、このコースは「自然に馴染むように」という理念のもと、エスケープゾーンがほとんどない。したがって、通常のタイヤバリアであれば1000万円ほどで完成するガードレール関係を、コーンズでは3億円以上かけてFIA公認の樹脂製の連結式バリアである「テックプロバリア」、プロ用のサッカーネットで使われるような超強靭なナイロン製ネットを導入し、徹底した安全対策を行なっているとのこと。

 今回筆者は、コーンズが用意したフェラーリ458スパイダーで3周ほど走る機会を得たが、山を切り開いて作られた関係からか、オープン状態で走り抜けるのは爽快で非常に気分がいい。「オープンモデルで走るのが1番オススメ」と言われていたところでのこのクルマだったから、前世で何か徳を積んでいたのかもしれない。

 いざコースに入ると、エキゾーストが山に反響し、日本ではなかなか味わえない環境がそこには広がっていた。先導車がいたので全開で踏めてはいないが、メインストレートではなかなかスリリングなスピード域まで出せるので、思う存分すっ飛ばすことができると感じた。アップダウンもかなり激しいので、ワインディングを駆け抜けるような楽しさも同時に持ち合わせており、全国数カ所のサーキットをなんとなく走ってきた筆者でさえ、可能であれば半日ほどずっと走っていたい魅力を早速感じた。

 ただ、少し気になったのは、やはり「エスケープがほとんどない」点だ。SNSでも少しざわついていたが、スピードが出るハイパフォーマンスモデルは、アクセルを踏めば怒涛の加速をするが、それを殺すためのブレーキングスキルも要求される。もちろん、ただドライブする程度であれば問題ないだろう。しかし、目を三角にしてすっ飛ばしたらそれ相応のスキルが要すると感じられた。また、勾配がキツい関係から、道の先が見えないゾーンもあった(こういう演出だそう)。スリリングで楽しいとも受け取れる設計だが、十分にコースレイアウトを理解してから全開で走るのが理想だろう。余計なお世話だろうが……。

 また、結構なタイトコーナーもあったので、クルマの基本的な動かし方をある程度把握しておくのが、ここで楽しく安全に楽しむための要素だ。それと、後続車とのスピードの違いも把握しておいた方がいいだろう。200km/h程度で走るマシンと250km/h程度で走るマシンの速度差であれば、一歩間違うと大事故になりかねないからだ。

 もちろん、コースを走る前にレクチャーを受ける機会もある。これは、サーキット経験有り無しに問わず、コース走行前に必ず、インストラクターの講習を受講し、インストラクターから合格がもらえた方のみ単独走行が可能となりる制度だ。ただ、スキルを見るのではなく、走行上の注意・マナーをしっかりと理解し、注意を受けた場合でも真摯に受け入れてくれるかなどが、合否判断基準になるとのこと。

 服装に関しては、ヘルメット・レーシングギア着用のクラスと長袖・長ズボンレベルで走行可能なクラスが用意される。詳しい全容はまだ明らかになっていないが、少し飛ばす程度のドライブもできるようになっていると思われる。

 この日は体験できなかったが、計測機とデータロガーを車内に装着するので、タイムやライン取りも確認することもできるそう。レースをする場所ではないが、後続が来た際には追い抜きや追い越し可能なポイントも用意されているとのこと。

 なお、「そんなに飛ばしてガソリンはどうすんだよ」というツッコミは心配無用。施設内にはガソリンスタンドも用意されているので、ガソリン問題は解決だ。ちなみこの近辺は外へ出てもあまりガソリンスタンドがないエリアなので非常にありがたい。1リッターあたりいくらなのかは不明だが、お金持ちにそんな心配はご無用(なはず)。

 気になる「コースを走れるクルマ」にも触れてこう。

 じつは、コースを走れるクルマはコーンズで購入したマシンのみではないという。なので、ヤリスクロスやシビックタイプRやGT-R、シトロエン2CVみたいなクルマでもOKだ。もちろん「改造車」も大丈夫。「世界中の名だたるスーパーカーに国産チューニングカーでタイムを破りに行く!」みたいな遊びもできそうだ。ただ、モラル的に”アレ”なクルマやクラブメンバーが不快に感じる場合は走行をお断りする場合もあるそう。

 なので、「お金を払ったからなんでもアリ」というわけにはいかなそうだ。後述するが、高額な会員権を購入して訪れる施設なので、その辺りの配慮は当たり前と言えば当たり前と言えよう。ただし、改造車の類でもっとも話題となる音量については、「何db以上の車両は走行不可」という基準はまだ設けていないそうで、開業後、「db以上の車が何台走ったときに何km先まで音が届くか」など計測し、近隣住民の生活に配慮しながら運営していくとしている。

 さてさて。かなり長くなったが、最後に会員権のお話をしよう。

「THE MAGARIGAWA CLUB」の会員権だが、これには2種類が用意されている。ひとつがアソシエイト会員というもの。こちらは会員の上限が750名、入会金は400万円、年次諸費用が105万円、5年毎の更新、更新費が180万円というもの。会員券の譲渡は不可能となる。コースは年270日利用可能だ。

 もうひとつは正会員。こちらは会員上限が500名で、入会金が3600万円(2023年6月までで今後変動あり)、年会費は22万円、有効期限と更新費はなし。会員権の譲渡は6年目から可能で、コースは年間315日利用可能というもの。

 どちらの会員もコースの利用料は半日で1万1000円、ゲストドライバー(招待した友人など)は半日5万5000円かかる。そのほか施設内で有料なのは宿泊(オーナー以外)、ダイニングでの食事、スパ、ヘリコプターチャージ、車両へのガソリン給油などだ。一方で無料で利用できるのはプール、温泉、ダイニング個室、トレッキング、ドッグラン、キッズルームなどとなる。

 正会員とアソシエイト会員のサービス内容の違いは、先述した金額や利用できる制度以外ではそれほどないという。ただ、一部サービスでは正会員の方が優先されることもあるそうだ。金額が金額なので仕方ないだろう。

 走行料金が違うことからわかるように、会員権を持つオーナーの友人や知人の招待は可能だが、福利厚生の一環として会社名義での会員権購入はできないので、もしそれをするのであれば、記名しているユーザー(会社であれば社長や会長など)と一緒に来る必要があるとのことだ。一緒に行って楽しいか、気がおもくなるかどうかは人間関係次第だが……。

 会員権の購入にはコーンズでのクルマの購入歴はとくに不要とのこと。また、購入前には面接もあるそうだ。どんな内容なのかは非公開とのこと。施設が施設なので来る人を選ぶ権利だってもちろんあるだろう。

 なかなか一般庶民は体験できないような施設であるが、こういった場所が日本にできる意味は非常に大きいと思う。いまはカーボンニュートラルだのなんだの環境にうるさい時代ではあるが、豪快な音を奏でるスポーツカーを思う存分走らせられる施設は、可能であればもっと増えてもいいのではないだろうか。会員権の値段やこういった制度の是非は別としてだ。個人的にはそう思う。

 さまざまな要素が織り込まれた、前代未聞となる超弩級のクルマ好きのための施設のオープンはすぐそこだ! なお、28歳の筆者があと60年ほど生きたとしても、またここに取材以外で来ることはきっとないだろう……。人生の最初で最後の経験がすでに終わってしまったことは少々残念に思う。誰か招待してくれたり、会員権を譲渡してくれてもいいのよ!?

 なお、WEB CARTOP公式YouTubeチャンネルでは「THE MAGARIGAWA CLUB」のコース試走動画をアップしているので是非ご覧あれ!


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

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ホンダ・シビックタイプR(EK9)/スズキ・ジムニー(JA11)
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