F1からタイプRに受け継がれホンダを象徴するカラーとなった
エンジンもホンダならではの独創的なエンジンで、1.5リッターNAなのにV12気筒、しかも横置きというバイクのレーシングエンジンそのものの発想で作られたもの(他社、クライマックス社のエンジンなどは4気筒の縦置き)。
マルチシリンダーのホンダ製RA271Eエンジンは、220馬力/1万2000回転の高回転高出力を誇った。ライバル勢は190~200馬力だったのでパワーはナンバーワンだったが、重量が重く、エンジンだけで約30kg、シャシーで約35kg、合計約65kgも他車より重たかった……。
おまけに横置きのV12気筒は幅をとるので、モノコックは運転席の直後で切り落とし、エンジン自体をストレスメンバー化するストレスマウントを採用。エンジンから直接サスペンションを出すことで、ショースペース化をはかっていた。
この方式は翌年BRMチームが真似て、1967年ロータス49+コスワースDFVで理想のパッケージとして完成するが、その先駆けとなったのがホンダのRA271だった。
レース本番ではデビュー戦のドイツGPが13位完走扱い。続くイタリアGP、アメリカGPはともにリタイアで終わってしまうが、翌年1965年に登場したRA271の発展版、RA272は最終戦メキシコGPで優勝! ホンダの、そして日本車によるF1初優勝の快挙を成し遂げた歴史的な一台となる。F1参戦11戦目で世界の頂点に立ってしまったわけだ。
このとき、現地で指揮を執ったホンダの中村良夫監督が東京本社に送った先勝報告の電報の一文が「来た、見た、勝った!」(古代ローマのシーサーの言葉を引用したもの)。
RA271と同じくアイボリーホワイト+日の丸+赤の「H」のエンブレムをまとったRA272は、2020年に日本自動車殿堂が選ぶ「歴史遺産車」に選ばれ、もてぎのホンダコレクションホールで動態保存されている。
というわけでホンダの「チャンピオンシップホワイト」は、独立独歩、無手からはじめたホンダF1挑戦の、熱きチャレンジスピリッツを受け継ぐ伝説のボディカラーで、RA271、RA272から続くホンダレーシング、ホンダスポーツの象徴なのだ。