サンクコストバイアスには気をつけたい
では、燃費性能で比べるとどうなのか?
初代ヴィッツの時代のカタログ値は10.15モードで、現在はWLTCモードとなっているため比較することは難しいが、カタログ値を振り返ると、初代ヴィッツの1リッター車は19.6~22.5km/Lとなっていた。一方で、ヤリスの1リッター車は19.6〜20.2km/Lであるので、計測モードを無視すればさほど変わらない。
仮に初代ヴィッツが経年劣化などでカタログ値の半分程度の燃費性能になっていたとしても10km/Lで走ることはできる。新車のヤリスがWLTCモードで走ったと仮定しても、年間に使うガソリン代は倍程度で済むといえる。
仮に年間5000km走るとして、初代ヴィッツの使うガソリンは500リットルで、ヤリスは250リットル。レギュラーガソリンを160円/Lとして計算すると、年間の燃料代は初代ヴィッツが8万円で、ヤリスが4万円だから、その差は4万円となる。
自動車税と燃料代に絞って年間維持費・ランニングコストを比較すると、初代ヴィッツはヤリスに対して5万円程度を多めに払うという計算になる。あらためていうが、この程度の金額差を埋めるためだけに新車に買い替えるというのは、愚の骨頂だ。
もっとも旧車にこだわって大事にしているのではなく、単なる移動手段として所有しているのであれば、修理代などのコストも考慮していく必要がある。
メンテナンスコストや、故障のたびに修理工場に持ち込む手間などを考えれば、手がかからない年式のクルマに乗り換えるほうが、QoL(生活の質)は上がるかもしれない。
よく「前回の車検で20万もかけて修理したから、まだまだ乗らないともったいない」という話を聞くが、年式によっては「次回の車検ではもっと修理代かかるのでは?」と思うこともある。
修理など過去に要したコストに影響されて将来的な判断が歪んでしまう状態を『サンクコスト(埋没費用)バイアス』と呼んだりするが、移動手段としてのマイカーであれば、サンクコストバイアスがあることを意識して、冷静に判断するのもユーザーの知恵といえる。
旧車増税の対象になる年式というのは、故障が増えてくるタイミングや純正部品の供給が止まりはじめるタイミングと合致することが多い。その意味では、買い替えを考えるきっかけにするのは、あながち間違っているとはいえないだろう。