8世代もあるのに全部スゴイってどういうこと? VWゴルフがいつの時代も世界中で「ベンチマーク」にされる裏にある「オーバークオリティ」な作り方 (2/2ページ)

日本の環境でゴルフを超えるクルマをつくるのは難しい

 ズバリ、コンパクトカーとして、目に見えない部分にまで徹底したこだわりを持つ、コンパクトカー、実用車として”オーバークオリティ”すぎるのが、VWのラインアップのなかでも、とくにゴルフということになる。それも、1974年に、デザインとパッケージングをG・ジウジアーロが担当して登場した初代ゴルフから始まる、今や50年近い歴史を持つゴルフの一つの完成形は、2012年に新開発のモジュールプラットフォーム「MQB」に一新された先代ゴルフ7であると、じつは現ゴルフVIIヴァリアントのオーナーでもある筆者は考えているが、乗り心地、操縦安定性、快適性のバランスの高さ、そして燃費性能は今だ一流。

 筆者の1.4リッターガソリンターボのゴルフVIIヴァリアントはすでに納車から9年を経ているが、ボディはガッチリしたままだし、ドアの開閉音の素晴らしさも不変。シートのかけ心地、ホールド性の良さ(スポーツシート)も絶品であり、疲れない。そして肝心の走りに関しても、今もって満足度は非常に高いままなのだ。ちなみに高速走行中心では、同クラスのハイブリットカー同等の18km/Lも普通に出てしまうほどである。

 だから、「ゴルフをベンチマークにしています」という新型車に試乗し、その場では「なかなかいいじゃん」と思っても、帰路、自分のゴルフVIIに乗り換えると「ゴルフをベンチマークにしてがんばってはいるけれど、追いついてはいない」と、いつも思えてしまうのだ。その理由はもちろん、すでに説明した生産効率の考え方とコストのかけ方が大きな要因。言い方を変えれば、国産コンパクトカーの開発陣がゴルフを超えるクルマを作れるかもしれない技術力を持っていても、それを100%実現するための効率二の次の生産方法、開発・生産コストのかけ方を、効率優先、コスト管理にうるさい国産自動車メーカーの会社が許してくれない……ということだろう。

 それは、VWの看板モデルであり続けるゴルフのグローバルでの圧倒的な販売台数の多さ、ゴルフI=18年、ゴルフII=9年、ゴルフIII=6年、ゴルフIV=9年、ゴルフV=6年、ゴルフVI=4年、ゴルフVII=8年という、ゴルフVIを除いた1世代のモデルライフの長さも、1台のゴルフに膨大なコストをかけられる決め手となっているはずである。

 そうした進化し続けるVWゴルフだが、最新のゴルフVIIIに至る中で、時代の流れとして多少のコストダウンも見え隠れする。コストダウン無視!? の最後の1世代がゴルフVII、ゴルフの最高傑作がゴルフVIIの後期モデル、ゴルフ7.5と、筆者は今も”勝手”に思っている。また、インフォテイメントシステムと呼ばれるナビゲーションの使い勝手に関しては、年々、使いづらくなってきたのも事実。ゴルフ7までの日本仕様インフォテイメントシステムはアジア向けとして独自に用意されていたのだが、ゴルフ8からは世界共通の1仕様となり、日本で使う上での機能が制限されるようになっていたりするのが惜しまれる……。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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