セールスマンの仕事への意欲が削がれる「マージン」の減少
購入者が納車まで長い間待たされる事態が発生する一方、販売したセールスマンも新規登録台数で実績カウントされるので、「受注してもいつ販売実績になるかわからない」という状況が発生した。「ひどい時には月に店舗で納車できたのが2台という状況もありました。販売実績ゼロとなるセールスマンも珍しくありませんでした」とは某新車セールスマン。
※写真はイメージ
しかも、単純に新車を登録できればセールスマージンがもらえるというわけでもないようだ。聞いた話では、まず目標販売台数があり、その台数をクリアしたうえでトータルでの売り上げ目標(つまり大幅値引きして乱売してはダメ)額が設定され、さらに下取り車の入庫目標台数なども設定され、それがクリアされないとセールスマージンの減額やマージン自体が支払われないことになるというので、まさに毎月1~2台といったポツポツレベルで納車できる新車があったとしても満足にセールスマージンをもらうことはできないのである。
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新車販売現場では納期遅延問題が長期化するなかで受注段階にて本来支給されるはずのセールスマージンの半額程度を支給して救済してみてはどうかとの話もあったようだが、「人気車ほど納車まで年単位でお待ちいただく事態も発生しております。こうなるといったん受注してもキャンセルになるケースも目立ってきます。仮にセールスマージンの半額を支給したあとにキャンセルになるリスクが高いので実現できなかったようです」とは業界事情通。
ただマージン支給の条件のなかの売り上げ目標額については、セールスマンにはあまり良くないレベルで逐次調整されるようだ。「たとえばトヨタ系ディーラーでは現状高収益車種のアルファード&ヴェルファイアが受注停止となっています(本稿執筆時点)。バックオーダーもほぼ消化したとされています。3代目は一時年間販売台数で10万台を超えるほど売れました。間もなく新型アルファード&ヴェルファイアがデビューしますが、新型デビュー後は新規受注停止になるほど人気が高まりそうだとも言われていますので、新規受注停止が起ころうとも新型アルファード&ヴェルファイアがデビューすれば、当然販売メイン車種の1台になるので、売り上げ目標額全体も引き上げられることになりそうだとの話を販売現場で聞きました」(事情通)。
※写真は3代目アルファードとヴェルファイア
35年ほど前、日本がバブル経済に沸いていたころに比べると、軽自動車でも支払い総額で250万円になるケースも珍しくないなど、全体的に支払い総額の底上げは起こっているのだが、新車を販売してもセールスマンが得られるセールスマージンはほんのわずかに減っている。そしていま、そのわずかなセールスマージンすら新車の納期遅延が改善傾向あるとしながらも、なかなか出口が見えないなか満足に支払われていないケースが続いているようなのである。