この記事をまとめると
■筆者は海外を訪れる機会が多いなかでBEVの普及を目の当たりにしてきた
■BEVバスは中国のBYDがけん引しているが台湾では自国ブランドのバスが走っていた
■日本の公共交通機関のBEV化は海外メーカー頼みになりそうな流れを感じる
アジアのバスは驚くほどのスピードでBEV化が進行
中国政府の積極的な取り組みもあり、中国国内では新車販売全体の約26%が新エネルギー車(BEV[バッテリー電気自動車]、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])となっている。とはいっても、都市部を中心にしてBEV路線バスやBEVタクシー、またはライドシェア車両のBEV化などが普及のメインとなっている印象もあるが、一般乗用車レベルでも沿岸部を中心に日本よりははるかに速いペースで普及が進んでいる。
BEV路線バスとなると、日本国内でも中国華南地区の深圳を本拠地とする比亜迪(BYD)汽車の車両が大型路線タイプだけでなく、小型タイプもコミュニティバスなどで活躍している。ただ、中国ではBYD以外にもかなりの数のBEVバスメーカーが存在し、日本国内でもBYD以外にも複数のメーカーがすでに車両販売を行っている。そして商社などがさらに多くの中国メーカー製のBEV路線バスを日本国内に導入しようと動き出しているようでもある。
日本以外でも、たとえば台湾ではコロナ禍前にはBYDのK9という大型BEV路線バスが台北市内で走り始めているのを目撃しており、世界的にもBYDを中心に世界各国で中国メーカー製BEVバスが走っていくのかと思っていたのだが……。
今年の春、タイの首都バンコクと台湾の台北市を訪れた。バンコクは2022年春にも訪れているが、その時は少々年季の入った内燃機関の路線バスばかりだったのだが、今年改めて訪れてみると、BEV路線バスがガンガン走っていた。今年中にはエアコン付きの路線バスはすべてBEV化されるとの情報もあった。しかも、バンコク市内を走っているBEV路線バスはタイブランドのものとなっている。どこまでオリジナルなのか、そして本格生産なのかKD(ノックダウン)に近いものなのかは残念ながらはっきりしなかったが、自国ブランドであることは間違いない。
そして台北市、台北駅近くの大通りをウォッチしていると、BYD K9のBEV路線バスをなかなか見かけることができなかった。不思議に思いながら通りを走るバスを見ていると、3種類ほどのBYDとは異なるBEV路線バスが走っていた。いずれも台湾企業もしくは台湾企業が関わっている中国企業の車両となっており。よくみると欧州ブランドのパーツなどは使っているものの、台湾国内製造もしくは少なくとも台湾側でコントロールできる形で車両生産が行われているようであった。「経済安全保障」という言葉が最近メディアを賑わせているが、自国内を走る公共交通機関車両を中国メーカーについてフルオリジナル車両を使うのはよそうという動きが目立ってきている。