PHEVは例えるならGTカーのような仕上がりだ
もう一方のプラグインハイブリッドは、前述のとおり2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたモデル。直4エンジンを縦置きにして、クラッチ、駆動モーター、クラッチ、8速ATというレイアウトで、FRをベースとした電子制御式の4WDだ。2.5リッターエンジンは188馬力/6000rpmと250Nm/4000rpm、モーターは175馬力と270Nmで、システム合計では327馬力に500Nmとなる。
ちなみにEV状態での走行可能距離はWLTCモードで75km、満充電までは3kWの普通充電で約7時間、6kWで約3時間、急速充電では20%から80%まで約25分と発表されている。
走ってみての大きく気持ちに残った印象は、まず“街なかではほぼEV”ということ。充電量がちゃんと残っていれば、アクセルペダルをグッと踏み込みでもしない限り、静々とモーターだけで走行を続けることができる。EVモードもあるのでそちらを選ぶこともできるが、ノーマルモードでも穏やかに走る限りはほとんどがEV走行といっていいだろう。その状態でも、しっかりした力量を湛えてることを意識させるように、滑らかに加速していく。
そしてもうひとつはスポーツモードに切り換えたときの速さである。思いのほか心地のいいサウンドを聞かせながら、強力な加速を味わわせてくれるのだ。0-100km/h加速は5.8秒。その数値はシリーズのなかで断トツ、である。とはいえ、その加速の伸びは高速道路の本線合流時ぐらいでしか楽しめないので、コーナーからの立ち上がりなどで実力の恩恵にあずかってニンマリさせてもらうことになる。
プラグインハイブリッドモデルも、コーナリングパフォーマンスは高い。軽やかに入っていく鼻先、力強く蹴り出す後輪、狙ったラインをトレースしやすくしてくれる前輪への駆動トルク。最軽量グレードで比較するとマイルドハイブリッドより130kg、“素”のディーゼルより250kgも車重が重い計算だが、それは乗り心地の落ち着き感に効いていて、マイルドハイブリッドより重厚にして快適な印象だ。それに重量物が低い位置に集中し、重量バランスを意識してレイアウトされてるので、前後と左右の重量配分も良好。適度に押さえ込まれたロール感とともに、コーナーを見事に安定した姿勢で、気持ちよく曲がっていくことができる。コーナリングスピードも結構なものだ。
そういう意味ではもっともスポーティなCX-60といえなくもない。ただし、“素”のディーゼルをたとえば“ライトウエイトスポーツカーのよう”とあえて表現するなら、こちらはその重厚な乗り味などから“高性能なGTカーのよう”と表現したくなるようなキャラクター。この2モデルほどはっきりしてはいないが双方のいいところをしっかり兼ね備えてるマイルドハイブリッドもあるわけで、CX-60のラインアップには見事に異なる個性が並んでいることになるわけだ。
それが美しいと形容しても異論が出てこないスタイリングと上質なインテリアを持ち、マツダらしい走りの気持ちいい走りを味わわせてくれるプレミアムSUVという同じベクトルの上に乗っている。ライバルとなる欧州勢にも負けていない存在感を漂わせ、それでいて299万2000円から626万4500円と価格帯はなかなかリーズナブルでもある。
このクラスのSUVを狙っている人にとってはかなりバリューの高いモデルだと思う。