この巨体でここまで走れるってマジか! アルファード・エルグランド・オデッセイの「ドレが一番スポーティか」決定戦 (2/2ページ)

ドライバー優先で考えられたミニバンと言っても過言ではない

 しかし、そうしたトヨタ、日産の国産ハイエンドミニバンをスポーツ度で大きく引き離していたのが、筆者も10年以上に渡って乗り続けた2代目アブソルート(3リッターV6)以降のホンダ・オデッセイだ。2代目アブソルートは欧州車に匹敵する上質な走りと、重心を感じにくい3リッターV6であれば、17インチタイヤ&専用サスペンション(前後ダブルウイッシュボーン!!)によってスポーティな走りも楽しめ、その完成度の高さは筆者が長年手放せなかったことからもおわかりいただけるだろう。

 オデッセイのスポーツ度が一気に高まったのは3代目から。なにしろ全高1550mmの低重心パッケージを採用し、そのアブソルートはまさにスポーツミニバンの名に恥じない、ホンダ車らしい仕上がりだった。ただし、低全高パッケージ故の室内空間に抵抗があるファミリーミニバン層がいたのも事実。

 とはいえ、その勢いを引き継いだのが、全高1545-1565mmという低全高パッケージはそのままに高級感を増した4代目オデッセイだ。エンジンは2.4リッター直4のK24A型を引き継いだものの、アブソルートはハイオクガソリン指定、204馬力、23.7kg-mを発揮する(標準グレードは173馬力、22.4kg-m)と、アブソルートの特別感、ハイパフォーマンスぶりをアピール。自動車専門家からの”走り”の評価も高かったのだ。なお、ここまでのオデッセイのリヤドアは、軽量化とボディ剛性確保のため、ヒンジ式であった。

 そして2013年にデビューした5代目となるオデッセイは、低全高、リヤヒンジ式ドアから一転、全高1695-1725mmのミニバンらしいミニバンに生まれ変わることになる。だからといって、ホンダがファミリーにだけ向けたミニバンを世に出すはずもなく、5代目初期のアブソルートの乗り心地は、ミニバンとしてスポーティすぎる操縦安定性を重視しすぎた硬さだったのだ。

 知り合いも数年前、中古車で初期モデルのアブソルートを手に入れたが、家族からはブーイングだったそうだ。ただ、最大170度リクライニングする2列目キャプテンシート=プレミアムクレードルシートのかけ心地、寝心地そのものは絶品で、当時の自動車用シート最上と言ってもいいほどだった。

 5代目オデッセイが出た頃、ライバルメーカーのミニバン担当者と話をしたとき、「今度のオデッセイはミニバンの皮を被ったスポーティカーですよね。サーキットだって気持ち良く走れる。しかし、ウチではあんなミニバンは作れません」と言っていたのを思い出す。それぐらい、ミニバンとしてまっとうな全高、室内空間を持ちながら、走りに振りすぎたミニバンが5代目オデッセイのアブソルートだったのである。

 2017年11月のマイナーチェンジ以降は乗り心地も改善され、2020年11月には、5代目オデッセイ最後のマイナーチェンジが行われ、主に先進運転支援機能=ホンダセンシングの拡充が主だった改良点だったが、ここにきて走りや装備を含む全体の上質感が高まり、走行性能も快適感とスポーツ度を見事に両立。ゆったり走っても、飛ばしても得られる走りの気持ち良さがハイレベルで実現したと言っていい。

 そう、上級ミニバンとしての(この時点ではホンダの最上級ミニバンの位置づけ)基本的な快適度と、走り好きユーザー、ホンダファンの「ミニバンでもスポーティな走りを楽しみたい」という二面の要望に見事に応えてくれた最終オデッセイだったのである。筆者も最終モデルに1週間試乗したが、アルファードやエルグランドとは別次元の乗り味、スポーツ度に再感動したものだった。

 2022年9月、ご存じのように、5代目オデッセイで、1994年から28年間続いたホンダ・オデッセイの「長い冒険旅行」(冒険旅行:オデッセイの意味)は、いったん終わることになった。が、やはりホンダにはオデッセイのようなミニバンが不可欠……という国内市場の熱い声から、2023年度中に中国生産の5代目オデッセイの進化版が上陸することになっている。

 オデッセイ・アブソルートの持つホンダ魂が息づくスポーツ度、ライバルミニバンにないスポーティな走りが楽しみ尽くせる孤高のキャラクターが、どのくらい熟成されているかも楽しみではないか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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