日産の「V字回復」はデザイナーのおかげ!? 2000年代前半の唸らせられるデザインの日産車5台 (2/2ページ)

いまでも愛車にしている人多数!

従来の概念を覆した動かないカーデザイン

 3台目は、2002年登場の2代目キューブです。2001年のジュネーヴモーターショーに出品された「シャッポ」の量産版として、もはや語ることはないと思えるくらいの秀作です。

「Cube My room」をテーマにしたデザインは、当時若干28歳の桑原弘忠氏のスケッチが採用されたもの。左右非対称のリヤが話題になりますが、とにかく「風を切って進む」クルマの概念を打ち破った四角いフォルムを、丁寧なRで面取りすることで優しい表情に仕上げたのが秀逸。「100メール先からでもキューブとわかる」というテーマを見事に成し得ました。

 また、ティーダ同様、当時の日産らしいインテリアへの注力具合も魅力です。とくに、ロンドンのインテリアブランドであるコンランとのコラボは革新的で、真っ赤なレザーシートの採用は「デザインの分野で世界をリードする日産」の面目躍如と言えるものでした。

力の抜けたエレガンスさを打ちだした大型セダン

 4台目は、2003年登場の初代ティアナです。セフィーロやローレルの後継として、日産の高級セダンを示す「ダブルアーチグリル」を持ちながらも、角を落とした大型の前後ランプにより威圧感を回避。美しいリヤクオーターを持つスッキリしたサイドグラフィックによって、独自のエレガントさを打ち出しました。

 ただ、同車の特徴はやはり「クルマにモダンリビングの考え方」のコピーに代表されるインテリアの高いクオリティです。チーフデザイナーの中島敬氏は「従来にないインテリアに挑戦したい」とし、「運転する心地よさと同時に、日本的なもてなしの心」を両立させました。

「モダンリビングコンセプト」は先のティーダやブルーバード・シルフィにも展開されましたが、単に高級素材をふんだんに奢るだけでなく、従前の欧州プレミアムブランドなどとはまったく異なる世界観を打ちだした点が見所です。

躍動的でありつつ繊細さも持ち合わせた先進SUV

 最後は、2002年に登場した初代のムラーノです。当初は北米市場に投入されましたが、大きな評判を受けて2004年に日本市場へ導入されたラージサイズのクロスオーバーSUVです。

「躍動感のある彫刻」をテーマとしたデザインは、緩やかなカーブを描くショルダーラインを持つボディにキャビンが載るという点で、先述の3代目マーチに近い構造。ただし、キャビンが前進感を持つ比較的シャープな形状であるところが異なります。

 キリッとしたランプとメッキのグリルの組み合わせは、これも先の初代ティーダに近い表情で、ボンネットフードと面一化された滑らかな表情がこのクルマの上品さを作っています。そこは、ガラス工芸が有名なベニスの島から取った車名が反映された点なのかもしれません。

 さて、先の中村史郎氏を中心とするデザイン改革では、全社を上げたブランディングが行われ、商品デザインでは「Clear(明快)」「Creative(創造的)」「Consistent(一貫性)」が掲げられました。実際、ほぼ同時に登場した新車群は、それぞれの特徴を持ちながらも、どこか共通の表情や質感を持っています。

 これは、明確なデザインテーマを持ちつつ、中島敬氏や青木護氏など、才能のあるデザイナーが自由に手腕を振るったところにその理由があると思えます。もちろん、現在の日産車の統一された表現も魅力ですが、当時の幅広いデザインの解釈による仕事にも大きな魅力を感じるのです。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
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