ホンダはやっぱり業界の異端児! 他のメーカーと違って「クロスオーバー」を名乗るクルマを用意しないワケ

この記事をまとめると

■いま多くのメーカーから「クロスオーバー」を名乗るクルマが登場

■しかしホンダ車は「クロスオーバー」を謳っていない

■代わりに「クロスター」を用意する車種が存在する

「クロスター」と呼ぶ理由とは?

 トヨタのヤリスやカローラには「クロス」が用意される。いずれもSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のカテゴリーに属するクルマだ。

 SUVはもともと悪路を走る機能を備えたクルマが発展したもので、サイズの大きなタイヤを装着して、フロントマスクにも厚みがある。外観は野性的でカッコイイ。またボディの上側はワゴンスタイルだから、後席の居住性にも余裕があって荷物も積みやすい。このようにSUVは、カッコ良くて実用性も高いために人気を高めた。

 SUVの商品特徴を表現している言葉として「クロス」の語源になる「クロスオーバー」もある。交錯するというニュアンスで、音楽の分野では、1970年代から使われていた。当時の「クロスオーバー」は、ジャズとロックの融合というように表現され、たとえばボブ・ジェームスなどがポピュラーだった。編成もストリングスを含めるものまでさまざまで、演奏の内容によってはアドリブパートがなく、ポール・モーリアのようなイージーリスニングに近い演奏も聞かれた。今はフュージョンという言葉が一般的だが、説明しにくいから「クロスオーバー」と呼んだ。

 クルマの「クロスオーバー」も似ている。SUVのボディは、一般的には前述のとおりワゴンスタイルだが、クラウンクロスオーバーは、ボディの後部に独立したトランクスペースを備えたセダンスタイルだ。セダンボディに大径タイヤを装着して、外観を野性的に演出しており、まさに説明しにいくい「クロスオーバー」だ。

 スバルのクロストレックも、クロスと、道のない所を進むようなトレック、山を歩くトレッキングを掛け合わせている。

 一方、ホンダ車は、フィットやフリードに「クロスター」を用意する。もともとホンダは、他社と似たことをするのが嫌いだ。しかもフィットやフリードがベースで、悪路指向が控え目だから、クロスオーバーではなくクロスターと呼ぶのも納得できる。N-BOXのエアロ仕様は、他社と同様に「カスタム」を名乗るが、これはむしろ珍しい。

 そしてフィットやフリードに加えて、ステップワゴン、N-BOX、N-WGNにもクロスターを設定すれば、日産のハイウェイスターのようにシリーズとしての表現も可能になる。今はSUV感覚のモデルが人気を得ているから、幅広い車種にクロスターを設定すると良いだろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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